ビックコミック スペリオール 2018年5月26日号
「さあ、ダンスを踊ろう」
最新号のスペリオール第11号の表紙は「機動戦士ガンダムサンダーボルト」。ガンダムとザク、そのパイロットのイオとダリルが対峙しあう緊張感あふれる1枚です。
江川と西本
第69話「ゴールデンボーイ」です。
<今回は野手のお話>
長嶋、王の引退で新たな時代を迎えつつある巨人軍。
その象徴ともいうべき大スターの原辰徳をドラフトで引き当てた藤田監督!
ツメはちゃんと切っておくものです(前号参照)。
さて今回は原フィーバーと守るポジションはどこか、を中心に話が進みます。
それにしても振り返るは藤田監督の強運ぶり。
やはり原にはスターたる何か持っているのか。
その出来すぎたドラマに主人公の一人である西本も「良く引いたなア・・・」と感心しきり。
ちなみに読んでいる新聞はスポーツ報野(報知ではありません)。
TVを見ると原の背番号にはボクの3番をと笑顔で答える長嶋前監督。
3番は永久欠番でしょとツッコミをいれる西本ですが、その前のセリフは長嶋さんではなく「カントク」。
監督辞任から間もないことと長嶋を慕う様子がさりげなく分かって好きです。
ここで、1981年の巨人の背番号を振り返ってみましょう。
1:王
2:松本
3:永久欠番(もちろん長嶋)
4:永久欠番
5:河埜
6:篠塚
7:柴田
8:高田←1980年引退イマココ
9:吉田
10:ホワイト
と王さんは助監督になりましたが錚々たる面子が揃っています。
皆さんご存知のように8番は高田のあとを原が引き継ぎますが、こうして見るとルーキーに一桁番号を与えた巨人軍の期待の大きさが良くわかります(4番が永久欠番というのは今回初めて知りました)。
当時の原フィーバーを「日本中のお祝いムード」として、日本地図とその周辺に人の笑顔で埋め尽くすという表現で表しています。
そりゃONがいなくなった後にスターが巨人に入団すればそうなりますよ。
そして練習場のギャラリーの多さも表現も相まって、原の人気ぶりの凄さが描写されていきます。
気が気でないのは長嶋の後継者ともいわれた熱血サードの中畑清・・・。
キャンプ前からサードからのコンバート、ポジション変更が新聞で取りざたされる中、納会の席で中畑はサード志願を王助監督に直訴します。
それを受け一拍おくと「キヨシ・・・その言葉を待っていた」。
少なくともこの段階では王さんは「サード中畑」を推していたようです。
ちなみに、納会の舞台は熱海後楽園ホテル「みさき館」。
残念ながら2016年に閉館となりましたが、ゴルフの球団コンペに納会という毎年恒例のパターンでした。
地元への経済効果もさることながら、当時はそのゴルフコンペすらTV番組にしていた記憶があります。さすが読売。
<今回の主役二人は>
さて、今回の西本は特訓シーンがあるわけでなくほぼ解説者。
来シーズンの内野ポジションを予想しながら、西本を通して作者は読者への選手紹介も兼ねていたようです。
秀逸なのはセカンド篠塚の猫背感と常に中腰で構えているサード中畑の姿が、当時の雰囲気をよく表しているかと思います。
一方、全日本で一緒のチームにいたこともあり、原を「タツ」と呼ぶもう一人の主人公の江川。
年下ということもあり、悪態ついている江川を描くことで、原の爽やかさを一層引き立てる演出!
そのクリーンさは「怪物」江川をして原を「スター」として認めるほど。
このマンガの特徴で華のある選手は「キラッ」と星マークがつきます。
後のシーンにでてくる原と定岡のツーショットではさらに画面がキラキラします(ワラ。
<そして多摩川に>
1981年1月13日、原辰徳がグラウンドに登場します。ワアと盛り上がるギャラリー。
しかし、改めてみると甲子園組の多いこと。江川の作新学院をはじめ、原が東海大相模、定岡の鹿実、篠塚の銚子商業などなど。そういえば王さんも早実でした。
今年日ハムに入団した清宮クンの大先輩です(ホームランおめでとう)。
また、「トロイカ体制」で王助監督と共にその藤田政権を支えた牧野ヘッドコーチが登場。後に選手ではなくコーチとして初めて野球殿堂入りした名参謀です。
で、その3人はサードをはじめセカンド、ではファーストか外野かと、原のポジションに頭を悩ませますが、宮崎2次キャンプはではセカンドへ。
あせる篠塚。原よりもはるか上にいかなければレギュラーは無理と危機意識を募らせます。
「同等ではダメ」。
この考えは東海大相模時代の原にも当てはまるのと思います。競争相手と同等では監督であった父親の威光でレギュラーになったと言われないために、はるか上のレベルを目指して周囲を納得させていたような気がします。
そうしてみると、プロになり今度はその競争相手に「はるか上」の意識を持たせるという対比は面白いなと考えました。
<今回のお気に入り>
高校時代に県予選で負けた西本。
そのため、前述した甲子園組から離れて拗ねた様子の西本とチビッ子ファンの「ニシモトがいじけている」の一言。
なんてことない微笑ましくも江川との境遇の違いを垣間見たシーンです。尤もその悔しさが西本を奮い立たせる材料にはなるのですが。
<次回は人生の一大事です(ネタバレあり)>
今回は表紙トビラ絵なしでいきなり一コマ目から物語が始まりました。
しかもグランドではなく西本家の食卓です。
よく読むと、あれ?いきなり一軒家だぞ。
いつ川崎のマンションから引越ししたの?
それくらい選手個々人のプライベート描写が少ないこのマンガとしては非常に珍しい入り方です(ちなみにジャージ派だったようです)。
そして、西本の奥さん!
今回だけで単行本8巻までの累計登場回数を上回るくらい描かれています。
そして最終ページでは職場に向かう旦那を「タカちゃん」とまさかのセリフ付きで見送る姿・・・
滅多に描かれることのない日常風景ですが、これが後々の大きな伏線になります。
最後のト書きが「この時の妻との別れが・・・・・まさか!」←これが事実だったのがホントにすごいから。
いやまさかだわ。次回以降の展開を考えると、原の話と思わせつつ、実は西本の奥さん紹介回ではないのかと思いました。
(以下ネタバレなので次回以降楽しみな方は飛ばしてください)
この後、西本がキャンプ中で不在の時に、なんと自宅がガス爆発!!を起こします(冗談ではなく本当の話)。
奥さんは一命をとりとめましたが重傷。
壊れた日常。
新シーズンへの仕上がりは最悪の中、まさかの開幕投手の指名。
そしてウイニングボール。
嗚呼、涙腺崩壊必至だわ・・・。