ビックコミック スペリオール 2018年6月8日号
表紙は「GIGANT」で単行本1巻発売の告知もでています。
奥氏の表紙は「いぬやしき」の時のそうですが顔のアップが多いですね。
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さて、江川と西本
第70話「今年の開幕投手は俺だ」です。
俺=西本です。
<セカンド篠塚>
表紙はセカンド篠塚。
身長・体重など野球カードのような紹介ぶりです。
え?体重68kg?
華奢な印象でしたが70kg以下だったとは。
ちなみに、本名はこの時点では篠塚「利夫」です。
92年に住職からの助言で「和典」に改名します。
今回の物語は大きく2部構成になっています。
前半はキャンプの話。
舞台は宮崎。
「サード中畑」構想もあり、セカンドは篠塚と原が争うことに。地味なポジションと思われがちですが、守る位置取り、カバーリング、カットプレーetc、実はサードよりも高度な判断が求められます。
原より汚れたユニホームが篠塚の一生懸命さを表しています。
グランド外では女性にモテモテ(笑)だった姿からは想像つきません。
それを見守る首脳陣の表情は今ひとつ。
何故?
原をセカンドでレギュラーにさせる理由を考えようにも、篠塚の守備スキルの高いからです。
王助監督曰く「実力差は歴然」と。
ただし、王助監督の「“打撃”などの総合的な判断は置いといて・・・」という台詞がでてきますが、篠塚が現在まで高い評価を得ているのは、“守備”よりも“打撃”だからです。
そういう意味では、この見立ては少し違う感じがしました。
尤もその後のページでは打撃も成長著しいとフォローもありますが。
余談ですがこのコマの篠塚はベルトの位置からセンターからライトへの引っ張る時のスイングでしょう(多分)。
「広角打法」という言葉を知っていますか?
右・左に関係なくヒットゾーンの広い打撃をすることです。
左打者の篠塚の流し打ちは芸術品といわれるほどスゴイものでした。
強いて言えばイチローよりも態勢が崩れず打つイメーかな。
特に81年の首位打者争いはもはや伝説で、タイトルの阪神:藤田(平)が.358に対して篠塚.357とわずか1厘差!!
終盤戦を大いに盛り上げました。
また、その篠塚の使用したバットを基に作られた、いわゆる“篠塚モデル”はあのイチローも20年以上愛用していることから、その影響力を今に伝えています。
道具つながりで表紙をもう一度見るとグローブに「SSK」のロゴが。こういう細かいこだわりは好きです。
また、中畑は中畑でサードに原が戻ってきた時の危機感から気合入りまくり。
記者をして“バットが振れている”と好調ぶりな様子。
こちらも死にもの狂い表情から当時流行った「絶好調!!」という笑顔とは程遠い印象です。
篠塚と中畑、それぞれが原の入団が刺激になり、良い方向で練習に反映されています。
<手抜き?の江川と鬼の形相!の西本>
投手陣は原・篠塚の「クリーン対決」に倣い「クリーン宣言」としてイメージアップ(?)を図る江川にクローズアップ。
「空白の1日」もあり“鉄仮面”、“一発病”など負の印象を払拭すべく、多くのマスコミや選手たちと談笑するシーンが増えていきます。
しかし、マスコミからは今度は“手抜き”、“マイペース調整”と見られるように段々なっていきます。
このイメージは後々にもついて回ります。
ちなみに昨シーズン80年の成績は
・江川16勝(最多勝。勝っても負けても完投は何と18回)
・西本14勝
江川は入団2年目でこの成績です。
最多奪三振も取っています。さすが怪物。
翌年の開幕投手はチーム最多勝が役目を果たすというパターンが多い中、西本はその開幕投手を目指し猛練習を重ねていきます。
足も高く上がっています。
当然、江川に対するライバル心は相当なもので、紅白戦で原に2本ホームラン(一発病×2)を浴びる江川を見ても“最後に調子を上げてくる”、と決して気を緩めることはありませんでした。
そして物語は後半に進みます。
<米国で聞く悲報、そして帰国>
それは日本時間3月15日の午前9時に起きた川崎市での火災事件。
西本は3次キャンプの米国ベロビーチでその悲劇を藤田監督から伝えられます。つらいね管理職。
「オマエの家が燃えた」
「火事になったんだ」
事情が呑み込めない西本ですが、ガス爆発と聞いて、嫁さん(マンガでは“女房”と表記)の安否の問いに対して、“幸い命「は」とりとめたそうだ・・・”と伝えられます。
急いで帰国する西本。機中では頭が相当パニック状態だったことでしょう。
ネットのない時代なので状況は病院に向かうまではわからないですからね。
ましてまだ新婚だったはずなので、“オレといっしょになった(結婚した)ためか”と今度は自責の念にまで駆られます。
今これを書いていて、自分に置き換えた場合に果たして冷静でいられるか正直自身がありません。
文字通り身を焦がす思いだったのではないかと想像します。
「死なないでくれ!」と願う西本。
追い打ちをかけるように最後のナレーションは「日本までの20時間。地獄へのフライト」。
どうなる次回!!
<今回のお気に入り>
耳に入ってくる、チンタラしている、ナメている、などの風評。
それを聞きながら「そーゆーわけじゃねーよ」とランニングする江川。
怪物だって練習はしっかりやります。
結果的に80年を大きく上回る成績でシーズンを終えています(ネタバレになるので今回はここでは言及しません)。
以上、第70話でした。
<おまけ>
・篠塚の話
台詞にあった“巨人で5年やってきた”。
5年前のドラフトで篠塚を引いたのはミスターこと長嶋前監督です。
同じ千葉県出身ということもあり、千葉県佐倉市の「長嶋茂雄記念岩名球場」では、たまに他の巨人OBたちと野球教室を開催しています。
ちなみに同球場の2017年リニューアルでは、やはり佐倉市出身の荻野目“ダンシング・ヒーロー”洋子が国歌斉唱をしています。
・江川の話
マンガではクリーン対決に影響されて突然キャラ作りに入った印象もありますが、元々は本人曰く面白い性格とのこと。
以下は「週刊ベースボール」((株)ベースボール・マガジン社)1981年(!!)1月5・12日号掲載の対談記事からです(『』は引用部分)。時系列的にキャンプより前のインタビューです。
(CMのオファーがあるかとの問いに)
『何もないですねえ。キャラクターとしては面白いんですけどね。』
(イメージアップを勧められて)
『でも、なかなか表にでないほうだからね。』
(普段から面白いのだから普段からやればいいのにと言われて)
『ああいうカタチでプロ野球界に入りましたからね(笑)。
元に戻すには時間がかかるでしょ。
~中略~徐々に地を出していければってね。』
怪物には怪物なりの苦労があったようです。