ビックコミック スペリオール 2018年6月22日号
表紙はサムライブルーの「フットボールネーション」。
いよいよ2018 FIFAワールドカップロシア大会が6／14から開催です。頑張れ西野ジャパン。
さて「江川と西本」。表紙は緊急帰国する西本を乗せた飛行機。前回最後のナレーション“地獄へのフライト”はまだ続いていたようです。
第71話のタイトルは「黒い柱」。その意味するところは。
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＜一命とりとめるも危険な状態＞
場面が変わって空港から川崎の病院に向かうべくタクシーに乗る西本。気の毒なくらい焦燥しきっています。タクシーの運転手がニコニコなのと対照的です。
「おれといっしょになったばかりに」
「プロ野球選手といっしょになったばかりに」
「これでもし死ぬようなことがあったら･･･」
「おれがアイツを殺したようなものだ！」
と自責の念に駆られています。
このとき西本まだ24歳。この年でこの重圧はキツイですわ。
夜の8時過ぎに病院へ到着。入口で迎える兄弟と病室へ移動しながら状況を確認します。「ヤケド」を負ったと。どの程度？「とにかく･･･ヤケドだ････」とだけ。病室に入ると親族、そして向こうのベッドに横たわる西本夫人（名前はわかりますがマンガでは記載していないので以下“夫人”としておきます）。全身が包帯まみれで相当な重傷というのは一目瞭然・・・。
「本当に生きているのか」
「こんな姿になって」
「つらかったろうな・・・」
「もう俺がついている」
変わり果てた夫人の姿をみて流石に声も出ません。
もう野球なんてどうでもいい、と思った矢先に耳を疑う言葉が。
「ゴメンなさい。迷惑をかけてしまって・・・」と夫人がしゃべります！
命があって良かった、とホッとしたのも束の間、医師からの説明では全身65％のヤケドで皮膚移植が必要と。まだ予断は許しません。
＜黒い柱とアンダーシャツ＞
翌日―。関係者と向かった自宅の焼け跡。新居だったのに。残っているのは“黒い柱”だけです。ステレオ（時代ですな）も熱で溶けるほど徹底的に。そこで西本は焼けなかったアンダーシャツを発見します。悲壮感溢れる表情から一転、アンダーシャツを握りしめて走り出します。向かうは合宿所。どうして？
「おれには野球しかない！！」
そしてそれが夫人の励みになる、と意を決し練習に励む西本！焼け跡から見つけたアンダーシャツを身にまとい、ダッシュ、腕立て伏せ、腹筋、スクワット、懸垂etc。
「焼け残ったアンダーシャツ・・・おれに・・・“練習しろ”と言っているような気がして・・・！」
流石に冗談だろうと思って色々調べてみましたが、本当に帰国翌日には本当に練習を再開していたそうです。すげえ。このメンタルの強さ。涙なしには読めません。そこには夫人を見て野球をやめてもいいと思った弱気な姿はありません。
＜ペナント開幕。スターティングメンバーは＞
そして1981年4月4日。待ちに待ったセ・リーグのペナントレースが開幕。対戦相手は中日ドラゴンズ。長嶋前監督の置き土産で前年度3位のAクラスを確保したため、ホームの後楽園球場からスタートです。
ONのいない新たなジャイアンツ。スタメンは以下のとおり。懐かしい名前が並んでいます。何人覚えているいます？
1番：ショート 河埜
2番：レフト 淡口
3番：サード 中畑
4番：センター ホワイト
5番：ライト トマソン
6番：セカンド 原
7番：ファースト 松原
8番：キャッチャー 山倉
そして
9番：ピッチャー 西本！！
ついに、ついに悲願の開幕投手を勝ち取った西本。自らを鼓舞するかのようにバシッとグラブを叩いて気合を入れます。一方、江川の不満そうな顔。「最多勝なのに何故オレではない･･･」と思っているのでしょう。だが巨人首脳陣のトロイカ3人が推したのは江川ではなく西本。多少ネタバレになりますが、藤田監督は西本の逆境強さを見込んで開幕投手に指名したようです。その辺りは次回以降に語られるのかな。
そして、他のスタメンを見るとサードは中畑が死守。注目のセカンドは篠塚ではなく原。首脳陣は篠塚の守備より原の打撃を重視しました。前回でも紅白戦とはいえ江川からホームラン2本打っていますからね。しかし、ルーキーでレギュラーですか。凄い。なお、ドラフト81年組は西武黄金時代の一人となる石毛、甲子園のアイドル愛甲（ロッテ）、後に巨人に移籍するサウスポー川口（広島）などが原と同期になります。
次回、西本の“快投”乱麻。
＜今回のお気に入り＞
合宿所でトレーニングをはじめる西本をみて「ニシ･･･」と涙を流すこのお方。多分絵柄からして武宮さんかと（間違っていたらゴメンナサイ）。“鬼軍曹”と言われたジャイアンツ独身寮の名物寮長さんです。入居期間が満期または所帯を持って退寮するまで、みんなこの人のお世話になります。
＜おまけ＞
・ユニホームの話
このマンガの特筆すべき点は、時代考証を的確に反映して描写しているところです。
今回はユニホーム。コミックを所有している方は80年と舞台である81年ユニホームの違いを探してみてください。81年版はいわゆる「V9ユニホーム」のデザインに戻っています。襟・袖口やズボン脇の2本のラインが80年版とは異なります。81年版ラインは黒の線に両側のフチドリがオレンジです。最終ページの西本の袖口を確認してみてください。デザイン変更の理由は盟主復活の願いを込めてとのことですが、長嶋監督解任のゴタゴタを払拭するために栄光のV9モデルに戻したという噂がもっぱらです。ちなみに、この頃から軽くて涼しいメッシュ素材が使用されはじめ、夏場の通気性は抜群だったといわれています。