約束のネバーランド【ネタバレ】129話
部屋には一人で頭を抱えて悩むノーマンの姿があった。
エマとの会話のこと、
今までの決断のことを考えていたのだ。
その後、ノーマンはザジと長い階段を降りていく。
彼が辿り着いた地下の空間には3人の仲間がおり、
その目の前には———————
人の5倍くらいはあろう巨大な鬼が
上半身を手錠と鈎針で吊り上げられているのであった。
ノーマンはエマと話した内容をみんなに説明する。
が、その途中バーバラが激しい頭痛の発作に襲われる。
それは鬼達の人体実験による後遺症や副作用によるものであった。
ノーマンは全員に改めて———————
「何があろうとこの計画を最後までやり遂げること」
「絶対に後には退かないこと」ということを約束するのであった。
―—————————その後、
ノーマンは今回の計画をもう一度最初から考え続けていた。
やがて彼の表情が自然と険しさを増していく。
僕は救える仲間を全員救いたい。
そのためなら神にでも悪魔にでも喜んでなるよ。
ノーマンは心の中でエマにそう呼びかけるのであった————————————。
奈落の底へ―—————
ノーマンは一人、両手で顔を覆っている。
そんなノーマンの心に去来するのはエマとレイのこと。
グレイス=フィールドでの別れの場面である。
「何を言ってもムダだよ。決意はかわらない。」
「僕は間違えるわけにはいかないんだ。」
「誰一人死なせないために。」ノーマンはそう言って農園を後にする。
「ノーマン・・・・・」
別れる寸前のエマとレイの哀しくも不安そうな顔が—————————
今でもノーマンの瞼に刻みつけられている。
ノーマンは顔を覆っていた両手をゆっくりと離し、
虚ろな目で手のひらをジッと見つめてから
ゆっくりと握り締める・・・
レイ、エマ・・・僕は・・・・・・。
そしてノーマンはゆっくりと立ち上がるのであった。
その後———————
ノーマンは手にランプを持ち、ザジを後ろに従えて
長い長い階段を下へと降りていく。
その先は暗い地下へと繋がっている。
階段を降り切ったところには
観音開きの大きな扉が待ち構えていた。
ギイイイイィィ ザジが両手で扉を手前へと引き開ける。
と、暗い空間の中にランプが一つ灯っていた―————————————。
「よォ、ボス・・・。」
そのランプの周りにはシスロ、バーバラ、ヴィンセントがいた。
「捜したよ・・・。」ノーマンが呼びかける。
そして全員は目の前に存在する〝モノ〟を見上げる―———————————
それは―————————
人の4~5倍はあろうかと思われる大きな鬼。
鬼の目と心臓部には大きな杭が打ち込まれている。
ピクリとも動かないところを見ると既に事切れているようだ。
両手首には巨大な手錠がはめ込まれ
両肘と両肩には大きな鈎針が引っ掛けられている。
ちょうど下半身は地面に尻を付けて両足は投げ出され、
上半身は・・・両腕がアルファベットの「T」の形に広げられ、
上から釣り上げられた姿であった—————————————。
何なんだこの地下空間の鬼は!!
この異形の者の成れの果ては・・・・
これはもう畏れや恐怖を通り越して————————
この行為に及んだ者の禍々しさと狂気と戦慄を
嫌が上でも感じてしまう・・・・・・
やはりノーマン達は狂ってしまったのか?
と思わず目を背けてしまう・・・
あまりにもヘヴィー過ぎる場面である。
地下空間にて
「ここへ来るのは久しぶりだね。」とノーマン。
「俺はよく来るぜ。」シスロが言う。
「落ち着くんだ・・・」バーバラも答える。
―———————ほんの束の間の静寂。
「で・・・あいつらの話って何だった?」シスロが尋ねる。
「一つは・・・鬼を絶滅させたくないってこと。」ノーマンが切り出す。
「やっぱり・・・」とバーバラ。
「それでボスは?」ヴィンセントがオウム返しに訊く。
「はやるなよ。計画に何ら変更はない。」
ノーマンは静かに言いう。
「あと、気になることが一つ・・・・〝邪血の少女〟が生きていた。」
「!!」
「それヤバくね!?」 3人が色めき立つ。
「僕に任せろ。それについては考える。」そしてノーマンは続ける。
「その〝邪血の少女〟だが・・・
エマ達とは面識がある。 友達だそうだ。」
「はあ? 〝邪血〟のやつが?」シスロが言う。
「それは都合が良くも悪くもあるな。」とヴィンセント。
「だからか・・・・」バーバラが思わず口を挟む。
「だからあいつは鬼を殺したくはないんだ。」
「鬼と友達? なんでだよ・・・なんでなんだよ。」
バーバラは歯を食いしばり怒りに震える。
「鬼ってのはそういうんじゃない・・・!
そういうんじゃないだろうが・・・・・・・!!」
バーバラの脳裡に、鬼にひどい目に遭わされた過去のシーンが
激しくフラッシュバックする―——————————。
「うっ・・・・!!」
その時、バーバラが突然両手で頭を抱え込むのであった———————————————。
ノーマンの仲間達はたまにここへとやって来るのか・・・・
鬼が無惨な姿を晒しているこの場所へ―————————
「ここにいれば落ち着く」と、バーバラは言うけれど・・・・
それは・・・自分を酷い目に遭わせた鬼が
無惨な状態で放置されているのを見て初めて————————
〝心の平安〟を取り戻せるという事なのであろうか?
その真意は測りかねるのだが・・・・
私はこんな場所はごめんこうむりたい。
それにしても突然苦しみだしたバーバラ!!
一体彼女に何が起こったのだろうか?
心配が頂点に達する前に、とにかく急いで次へと読み進めよう。
バーバラの発作
ズキッ・・・!!
「あっ・・・」
バーバラはあまりの激痛に両手で頭を抱え込む。
「くそっ・・・・!! 頭が・・・割れる・・・・」
「バーバラ!!」ヴィンセントが叫ぶ。
「いつもの発作だ!!」シスロが言う。
「ここ数日で発作の間隔が更に狭くなってきている・・・。
それも私達全員がだ。」ヴィンセントが呟く。
「私の予備の薬がある。」
ヴィンセントが手のひらに10錠ほどの錠剤を落とす。
「さあ飲むんだバーバラ・・・」
「薬の量も増えた・・・・
服用する頻度だけの問題じゃあない・・・・
症状自体もかなり悪化し始めている・・・。」
ヴィンセントは自分自身に言い聞かせるように呟く。
「思いの外、我々にも時間がないのかもしれない・・・・。」
「ほらな・・・これが鬼なんだよ・・・」
バーバラが頭を抱えたままで叫ぶ!
「所詮私達は物以下、
家畜以下、
それが当然・・・
これが鬼にとっての食用生物(にんげん)なんだよ!」
「奴らさえ・・・」
バーバラは苦痛で表情を歪ませ、涙が頬をつたう・・・・
「鬼さえいなければ・・・・」
ノーマン、シスロ、ヴィンセント、ザジの4人はバーバラを見守るのであった。
「なあボス・・・・。」
重い静寂をシスロが破る。
「俺達・・・ボスの留守中に・・・エマとレイの2人と話したよ。」
シスロは続ける。
「ホント、いい奴らだったよ・・・
あの甘ぇ戯言には反吐が出るがよ・・・・
マジでいい奴らだった・・・・。」
シスロは顔をノーマンへと向ける。
「で・・・ボスはこっち側だよな?」
「ボスはボスだよな?」
その言葉は殆ど懇願の色を滲ませていた。
「ボスは迷ってなんかいないよな?」
・・・・・・・・・・・・・・・
ノーマンと他の全員の目が合う。
「ここまでやったんだ。後には退かないよ。」
ノーマンは仲間達に向かってキッパリと言い切るのであった———————————————。
ここで初めてノーマンの4人の仲間達が
鬼の実験による「後遺症」や「副作用」で激しく苦しんでいることが明かされる。
しかも死が間際までやって来ていることまで暗示されるのだ。
く・・・なんてこった。
これじゃあこの4人が「鬼」を死ぬほど憎悪していても
全然おかしくはないではないか・・・・
いや、むしろ憎まない方がおかしいというものだ。
体を滅茶苦茶にされ、
死ぬ寸前まで追い詰められ
何もかも奪われた〝究極の被害者〟だったのだ。
彼等にとっては、「鬼」=「死」以外のなにものでもない。
エマはこの事を知らない・・・・
もし知ってしまったら彼女はどう思うだろうか?
それぞれがそれぞれの立場で「鬼」に相対している・・・・
誰も間違ってはなく・・・
誰もが正しくはないのかもしれない―———————————
僕が背負うべきこと
―————————————2047年2月
ウウウゥゥ・・・
深い森の中にけたたましいサイレンが鳴り響く。
その音の発生源の巨大な建物は大きな白煙を吐き出している。
床には小さな子供や鬼の死体が転がっている。
「これが・・・ラムダの研究データ?」
狂暴な目付きのノーマンがそこにいる全員に語りかける。
「足りないな・・・・ここにある書類は殆どが僕達食用児の記録だ。」
「僕が知りたいのは————————
鬼が何を食べて
どう変異し、
どう再生し、
どう退化し、
そしてどう死ぬのか・・・・?だ。」
「それを知るためには鬼(きみたち)のデータが全く足りないんだよ。」
そう言い放ちながら
ノーマンは拘束している鬼達に
冷酷な視線を向けるのであった——————————————。
―——————————そして時は現在(いま)
ノーマンたちがいる地下空間には
壁という壁に所狭しと大きな瓶が並べられており
その中には液体に浸された
鬼の頭や頭蓋骨、
脳や眼球、
胎児や内臓、
ありとあらゆる肉片などの————————————
鬼に関する全てのものが揃っていた。
ノーマンは地下を出て
長い階段を地上へと歩を進める。
そして
この計画についてを
もう一度最初から思い返していた―———————————。
僕は迷ってなどいない。
僕が全てを始めて、
僕が手を下した。
そして・・・これはみんな僕が背負うべきこと。
エマもレイも優しい―——————
でも優しいだけじゃこの世界には勝てない。
現にこの僕が自らの出荷を選らばなかったなら
みんなはここまで脱獄して来れたかな?
僕には悔いはない。
救いたい。
僕はエマ達もシスロ達も、
この世の仲間達みんなを救いたい。
そのためならば―—————————
僕は神にでも悪魔にでも・・・
何にでも喜んでなるよ・・・・・エマ。
ノーマンは1人で改めて心にそう強く誓うのであった—————————————。
ノーマンがいかにして今へと至ったのかの過去のほんの断片が語られる。
確かに並大抵ではない―———————
かなり激しく辛い出来事を悉く乗り越えてきた事がよくわかる。
鬼の研究にもかなりの精神力を継ぎこんだに違いない。
そう、これだけの事をするには
人間の心を捨て去って・・・・
無理にでも〝悪魔〟にならなくてはならなかったのでは・・・・
そう考えると、ノーマンが不憫に思えて仕方がない。
ノーマンには本当にこの選択肢しか残されていなかったのか?
もしこの時、傍にエマとレイがいれば―————————
もっと良い答えが見つかっていたのではないか・・・
そう思った読者も少なくない筈である。
約束のネバーランド129話の感想
今回はノーマンの苦悩から始まり、
最後は揺るぎない決意で幕を閉じる―————————
こんな「ノーマンの心」を中心に描かれる。
ノーマンがグレイス=フィールドから出荷された時や、
ラムダ農園を破壊した時の心の有り様・・・・
そしてエマやレイとの再会による微妙な心の揺れまで
様々な心象風景を軸に―———————
バーバラの苦しみや、他の仲間達の宿命などが散りばめられて
読者の心に深く突き刺さるエピソードとなったのだ。
そして最後には
ノーマンの新たな決意が宣言される。
もしかしたらノーマンは
今まで犯してきた殺生や、
全ての罪や宿命を
みんな一人で背負って死のうとしているのではないか・・・・
そんな覚悟と哀しさを感じずにはいられない。
さて、来週である。
〝七つの壁〟探しの旅へと赴いたエマとレイの運命は?
ノーマンの次なる一手は?
そして彼の心の行方は?
ギーラン卿やラートリー家のその後の動きは?
まだまだ解明されていない事柄でいっぱいのこの物語も、
終わりが近づいていることは間違いない。
ここで我々読者も、もう一度気合を入れ直し—————————
「ノーマンの心の行く末」をしっかりと見届け、
そしておそらくこれが最後となるであろう・・・
エマとレイの冒険を、さらに応援し続けていこうではないか!!