鬼滅の刃【ネタバレ】第126話 彼(か)は誰(たれ)時(とき)・朝ぼらけ
刃一閃、鬼殺隊隊員・竈門炭次郎は上弦の肆・半天狗の本体の頸を、斬り落とすことに
成功する。
夜明けが迫り、禰豆子に森に逃げるように指示するが、彼女は炭次郎のもとに走り寄る。炭次郎は抱き止め、朝日が当たらない場所へ導こうとするのだが、禰豆子はさらに炭次郎の後ろへ走ろうとする。
振り向いた炭次郎は、頸の無い鬼の体が逃げ遅れた里の人たちを襲おうとしているのを
目にする。
炭次郎は転がっている鬼の頸の「舌」を確認すると、本体とは違う文字が刻まれていた。
鬼を倒すのをしくじったと悟った炭次郎は、すぐさま鬼の体を追おうとするが、
彼の後ろで、夜明けの薄い日の光を浴びてしまった禰豆子の顔が焼け爛れてしまう。
炭次郎は禰豆子に覆いかぶさり、日を浴びるのを防ごうとするが、その一方、鬼はすでに里人達に追いつこうとしていた。
と、日の光で焼けていく禰豆子が、炭次郎を大きく空中に蹴り上げる。その彼女の気持ちを理解した炭次郎はそのまま着地し、鬼を追いながら本体の匂いをかぎ分ける。
炭次郎は頸のない鬼の正面に飛び込み、心臓部に隠れていた小鬼ごと体を一閃し、
本当に鬼を倒すことに成功する。
鬼を倒せたが、禰豆子を失ったことに落胆し、うつ伏して涙する炭次郎……。
が、里の人が指さす方には、日の光の中、笑顔が美しい禰豆子が立っていた。
そして彼女は優しく炭次郎に語りかけるのであった。
「お、おはよう。」
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1. 禰豆子、走る
一閃。ついに炭次郎は鬼の本体の頸を切断することに成功する。
そして…辺りは薄日が差し、夜が明け始める。
「禰豆子、逃げろ!」必死で叫ぶ炭次郎だが、傷と疲労で如何せん声が出ない。
禰豆子は依然、炭次郎の方へ走って来る。
違う‼禰豆子。 こっちに来なくていい!
危ないのはお前なんだ。 日が射すから!
炭次郎は声にならない叫びで、彼女が来るのを必死で止めようする。
が、走る禰豆子の力強い瞳は炭次郎の後ろを見据え、そこへ行こうとする。
「禰豆子‼ 逃げろ…‼」やっと出せた声を張り上げて彼女を抱き止める。
「ううっ‼ ううう」禰豆子はそれに抵抗して炭次郎を越えて行こうとする。
「⁉」 振り向く炭次郎。 そこで彼が見たのは———
「うわああああ!」
逃げ遅れた里の人達が、頸を失くした鬼に追われている姿であった‼
遂に鬼の頸を斬り落とした炭次郎! これで今までの苦労が報われるというもの。
しかし夜明けが近く、辺りには薄日が差そうとしており、このままでは禰豆子が危ない!
しかも彼女は日を遮るモノが無い炭次郎の方へと走り寄って来るのだ!
鬼を倒してもホッとすることを許さないこの緊迫感はどうだ‼
作者はまだ「この話し」を終わらせる気が無いことを、高らかに宣言している!
そして、禰豆子の大きく見開かれた瞳は一体何を意味しているのか?
すぐに次の章へ進もう!
2. 禰豆子か? 鬼か?
「うわああああああああああ‼」 里の人たちが叫ぶ‼
「逃げろ! 逃げろ‼」 「頸を斬られたのに死んでない‼」
後ろを振り向いた炭次郎が見たのは、
頸のない鬼に追われ、襲われようとしている里人たちの姿だった!
⁉ 「なっ…」 彼は急いで落ちている鬼の頸へと目を走らせる……。
舌に〝恨み〟 ⁉ え…本体は〝怯(おび)え〟だったはず…。 舌の文字が違う‼
炭次郎は瞬時に悟った。
「しくじった‼ 止めなければ…アイツに止めを‼」走り出す2人!
カッ。 しかし辺りを〝日の光〟が薄く差し始める。
ジュッ。「ギャッ」禰豆子の顔の角が生えた右半分が焼け爛れる…。
「禰豆子‼ 縮めろ‼ 体を小さくするんだ‼」
炭次郎は振り向きざまに彼女を庇い、自らの体を盾にして覆いかぶさる。
ジュウウゥゥ。 「ううっ…」禰豆子の顔は焼け続ける。
まだ太陽が昇りきっていなくてもこれほど…‼ 炭次郎は焦る。
「わあああ」 遠くで里の人達の叫び声が響く。
まずい‼ 炭次郎は顔を上げる。
誰か…‼ 玄弥‼(玄弥は崖ぷっちにしがみついている…)
時任君…‼(無一郎は遥か崖の上にいる…)
無理だ。みんな遠すぎる。 そうだ、あの鬼も朝日で…‼
駄目だ‼ その前に里の人達がやられる…。 ドクン。
ドクン、ドクン。 禰豆子を抱えての移動じゃ間に合わない……。 ドクン。
ああ…ああ‼ 駄目だ、決断できない。決断……。 ハア、ハアッ。
ドカッ‼
刹那、炭次郎の体は空中へと舞い上がっていたのだった‼
一章で、禰豆子がなぜ必死で走り、目を見張っていたのか……。
その答えを読者はすぐに知ることとなる。鬼はまだ生きていて人を襲おうとしていたのだ。
禰豆子はそれを阻止しようと必死で追っていたのだ!
なんてこった! まだ死なないって一体どうなってるんだ!
我々読者の頭の中も「?」でいっぱいだ。 まだ生きるのか! この鬼は!
こうなってしまうと……もうお手上げである。
しかし、ここでの「一番の衝撃」は、炭次郎の苦悩する姿だ!
「禰豆子の命か? 里の人達の命か?」
炭次郎にとっては妹の禰豆子を人間に戻すため、これ以上鬼による被害者をこの世からなくすために鬼殺隊に入り、現在(いま)に至っている。
その何よりも大切な「禰豆子の命」が失われようとしている。
しかも自分の目の前で、である。
これは彼の「アイデンティティー」が崩壊してもおかしくない出来事なのである。
そして、常に自分のためではなく人のために動く炭次郎にとっては、
襲われる里人をそのまま見殺しにする訳にもいかず……
この2つの相いれない状況に挟まれて、彼の心が初めて折れかけるのである‼
炭次郎がこんなにパニクッて、哀しみと絶望感を目に滲ませるなんて、
かつて今まででに見たことがない。
でもそれは、一人の男の子、一人の普通の人間としては至極当然で当たり前の事。
誰も炭次郎を責める事は出来ないのである。
が、炭次郎はいきなり空中に跳ね飛ばされることにより、状況は大きく変化するのである! では早く次に進もう。
3. 禰豆子の想い。炭次郎の涙。
「っ……‼」
炭次郎は禰豆子によって空中へと大きく蹴り飛ばされていたのだ!
それはあたかも、柔道の巴投げを受けた状態と言えば分かり易いであろう。
炭次郎は空中で真っ逆さまになりながら、焼け爛れていく禰豆子を目で追う。
すると、その彼女の目には満面の笑みが宿っていた。
炭次郎はその目を見た瞬間に全てが吹っ切れる!
そのまま反転して地面に着地し、鬼を追いかける。
嗅ぎ分けろ。 まだ遠くには逃げていない。 (その双眸に決意の涙が零れ落ちる)
本体がいきなり遠くへ離れたら匂いで気付くはず。
近くにいる。 どこだ、匂いで捉えろ。 形を、色を。
そこか! まだこの鬼の中にいるな。 (嗅覚に集中する)
そうか……
もっと、もっとだ…もっと鮮明に!
(嗅覚を最大に研ぎ澄ます)
見つけた! 心臓の中。 こんどこそお終いだ!
「うわあああ駄目だ! 追いつかれ…」
既に2人の里人の頭は、鬼の両手にムンズと掴まれていた!
ドン‼ 里人を掴んでいたはずの鬼の両手首が、突然血まみれとなって宙を舞う。
炭次郎が目の前に飛び込み、手首ごとぶった斬ったのだ!
「命を持って罪を償え!!!」 炭次郎のまっすぐな瞳が鬼を貫く。
刹那、〝恨〟の心臓に隠れていた本体の「怯の小鬼」の脳裡に様々な場面が現れる。
盲目の男が指をさす。
「なんでお前は人から物を盗むんじゃ。」
(儂が悪いのではない、この手が悪いんじゃ)
その男が血まみれで倒れ、横には半天狗が包丁を手に立っている。
——————————なんじゃ…これは……
奉行所の白州で「お裁き」を受けている。
「お前は別の場所でも盗みと殺しを繰り返していたようだな。」
(滅相もない、儂はこのように目も…)
「貴様は目が見えているだろう。」代官が言い放つ。
「手が悪いと申すか、ならばその両腕を斬り落とす!」
——————————人間の頃の儂か?……これは?
その代官が血で染まった着物のまま言う。
「貴様が何と言い逃れようと事実は変わらぬ。」
気高き侍は続ける。
「口封じをしても無駄だ。必ず罪を償う時が来る。」
一人の涼しげな青年が目の前に現れる。
「明日打ち首とは可哀想に、私が助けてやろう。」
———————————「走馬灯」か……
そして炭次郎の〝燃える刃〟が、鬼に炸裂するのであった!
炭次郎の迷いや心の揺らぎを、禰豆子の「笑顔」と「ひと蹴り」が消し飛ばす!
禰豆子の「笑顔の意味」を瞬時に理解する炭次郎。
そうなのだ! 〝兄妹の想いはひとつ〟 罪なき人々を救うこと!
炭次郎の「涙」は強さの証。
彼のその「涙」は、禰豆子の「想い」をしっかりと受け止め——————
「これからも人々を救い、鬼を倒すのだ!」という禰豆子への返答であり、
彼女への「別れの言葉」であったのかも知れない……。
それにしても気になるのが、半天狗が見た「走馬灯」である。
今までしてきたいろいろな悪行や責任転嫁の数々が一瞬で描かれるのだが……
何とそこに、見覚えがある「謎の青年」の姿が見られるではないか!
しかも、「私が助けてやろう。」って言うセリフまで飛び出す始末。
これはもはや鬼舞辻無惨以外ありえないではないか!
読者に様々な「興味」と「疑問」を植え付ける問題シーンである。
4. 禰豆子、再臨す!
炭次郎の「怒り」と「炎」の刃が、鬼の体を「心臓の中の小鬼」ごと切り裂いた!
そして小鬼の頸が切断される。
バラ… 同時に鬼の体は灰と散る。
勝った…禰豆子を犠牲にして…。
炭次郎は両手を地面につき、うつ伏して涙を落とす。止めどない涙を………。
ううっ。(日の光に焼かれて禰豆子は骨も残らない…)ううっ、うっ。
「………」横にいた里人が何かに気付き、涙の少年に声をかける。
「竈門殿、か、竈門殿。」
「……?」炭次郎が涙でグシャグシャの顔を上げると、ひとりの里人が彼の後ろを
指さしている。
———————————そこには、朝日に輝く一人の美しい少女が立っていた!
それは、昔とちっとも変わらない可憐な姿の「禰豆子」であったのだ‼
口の封印は外れている……。
ハア ハア ハア「……」 ハア
炭次郎は、涙と喜びで声が出ない。
「お、お、おはよう。」
そんな兄に、禰豆子はとびっきり素敵な輝く笑顔で語りかけるのであった。
鬼が塵となって消え、これでホントに闘いが終わりを迎える。
うわ~! 長かったぁ~! 半天狗は強かったぁ~!
これは読者全員の気持ちを代弁している言葉である……と、私は確信している。
「上弦の肆」がこんなに強いってことは、これからの敵は……もっと……。
考えるだけで先が思いやられそうなので……もう、考えるのは止めよう!(笑)
そして、ビックリなのが朝日の中での禰豆子の登場シーン。
当の炭次郎も哀しみと喜びの狭間で少しパニクッている様子である。
まあ! 何がともあれ禰豆子が生きててくれて良かったー!
もう最高‼ これぞ完璧なハッピーエンドだぁ‼
禰豆子がどうして〝日の光〟を浴びても大丈夫なのかは、おいおいわかるはずだ。
あせらずに行きましょう。
鬼滅の刃126話の考察
今週は一言で言って「禰豆子の死と再生の物語」である。
全編に渡って禰豆子の行動に焦点が当てられているのである。
彼女が、迷い悩む炭次郎を後押しし、彼女の「ひと蹴り」が鬼の撃破へと繋がっていく。
そして、 全身〝日の光〟で焼き爛れていく中での禰豆子の笑顔———————。
それは「他人のためには自分の犠牲も厭わない」という炭次郎の姿そのものではないか!
そして、日に焼き尽くされ、そのまま消えてしまったかに思われた禰豆子が、
朝日に輝きながら、さらに美しい姿で現れるのである。しかも満面の笑みを湛えて‼
「自己犠牲」に「復活」とくれば、これはキリストに始まる神話や仏様などの物語に
近いモノがあり、彼女の光に包まれた姿は、そこはかとない神々しさと清らかさが
溢れ出ている神や仏に近い姿でもある。 そう、まさに女神なのだ!
「受難の後の救済」「滅びの後の復活」。これもこの「鬼滅の刃」の隠されたテーマの
一つであり、恐怖と絶望に陥りかけた登場人物と読者を、最後には安らかに救ってくれる
「最強の武器」、「希望への力」となるのである。
さあ! そして来週である。
女神のごとく生まれ変わった竈門禰豆子。新たな姿の彼女が〝新しい希望〟の力となって
炭次郎や鬼殺隊をさらなる次元へ導いてくれることは間違いない!
来週もしっかり括目し、新たな展開に振り落とされないようにしっかりとしがみつき、
輝く未来に向かって全力で走って行こうではないか!
手を伸ばそう! 美しく輝く未来はもうすぐ、そこにある!
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