新兵たちは皆、松左の命の灯が消えないことを願っていました。
「死なないで下さい!松左さん!」
「死なないでっ」
【 干斗と松左 】
出来るだけ信の近くに・・
そんな松左の願いを叶えるべく、松左を担いで進む干斗の前に交戦中の崇原歩兵団が見えてきます。
崇原歩兵団は信の勢いに乗って前線深く入り込んでいました。
干斗が松左に語りかけます。
「隊長達はさらに前、きっと敵の最後の防陣まで行ってますよ!隊長は今日必ず趙峩龍を・・」
今の松左の耳に干斗の呼びかけが届いているとは思えません・・
それでも何かを感じたのか松左が声にならない声で信を鼓舞します。
「頑張れ・・・信・・・頑張れ‥頑張れ・・・」
【 趙峩龍本陣 】
信に率いられた飛信隊前線部隊は勢いのまま趙峩龍軍の最終防陣を突破寸前!
飛信隊の強さと勢いに浮き足たつ趙峩龍の側近たち。
しかし趙峩龍は冷静にその状況を見つめている。
「まるで王騎のようだな」
趙峩龍は自ら先頭に立ち矛をふるう信の姿と王騎の姿をダブらせます。
信や王賁にかつての六将の気配を感じると言った尭雲の見立てが誤りではなかったことを実感。
かつての六将に似た気配に血が騒いだのか趙峩龍が動きます。
槍の名手、徐肖(じょしょう)と徐林(じょりん)に伝令を送り、自らも馬に乗って出ます。
同じ頃
信と飛麃の楚水らが最終防陣を突破!ついに趙峩龍本陣を眼前に捉えます。
「抜けたっ 突破した! あとは本陣っ・・!?」
ドドドドドドド
趙峩龍率いる騎馬隊が本陣を捨てて左へ移動を開始!
信も飛麃も趙峩龍の意表をつく動きに驚きます。
騎馬隊の中に趙峩龍の姿を確認する信。
そしてまた趙峩龍も信に視線を送ります・・まるで誘っているかのように・・
信が吠えます!
「逃がすかァ! 追うぞォ!」
オオオオオッ
【 趙峩龍の策 1 】
飛信隊の猛追に焦る趙兵達・・
「振り切れませぬっ 趙峩龍様っ」
趙峩龍はあえて振り切ろうとはしていませんでした。
王騎、摎、王齕、といった将自ら先陣を行く烈将達と数多の戦いをしてきた経験上、烈将達共通の弱点を趙峩龍は知っていました。
烈将達は前を阻む敵に対しては無類の強さを見せるが、そうではない敵には気の当て場を失うのだと。
「特にお前達は・・・横撃急襲に弱い!」
追撃中で間延びした信達騎馬隊に趙峩龍軍土雀隊が左右から挟撃!
ドドドドッ
趙峩龍の思惑通り、横からの攻撃によって追撃の足を止められてしまう信達。
「ジャマだァ!」
信が吠えますが左右から挟撃して来た土雀兵達はそれまで戦ってきた防陣兵よりも格段に個々の強さが上でした。
突然強い一撃が左右から信に向け放たれます。
ド ドッ
その一撃を放ったのは土雀左隊長の徐林と土雀右隊長の徐省。
ゴゴゴゴゴ
二人が信の前に立ちはだかります!
「よもや真に本陣を捨てる戦況になろうとは」
「だが、その代償に命をもらうぞ飛信隊 信!」
【 趙峩龍の策 2 】
趙峩龍は徐肖と徐林が信達をとらえ、土雀がもの凄い勢いで信達を包囲していく様を見ていました。
最後の防陣を抜かれた場合に備え最強の徐兵団を本陣に配置し、さらに手薄になっている秦・右翼本陣を狙う別動隊まで用意していたのです。
「嫌な相手で悪かったな 飛信隊」
右翼本陣には河了貂と少数の兵しかいません。
【 信 vs 徐林と徐肖 】
徐林と徐肖の同時光軍撃を防ぐことで手いっぱいの信。
少しでも信に攻撃する隙を作ろうと徐林たちに向かおうとする兵達ですが徐兵団が強く身動きが取れません。
どんどん増えていく包囲兵。
遠く離れた干斗たちにも騎馬隊が囲まれている様子が微かに見えます。
松左は干斗に担がれ、うわごとのように同じ言葉を繰り返していました。
「頑張れ・・・信・・頑張れ・・・信・・」
松左の想いが届いたのでしょうか。
防戦一方の信はあえて一撃を受けることで攻撃に転じる隙を作ろうと本能で動きます。
一方的に攻めている優位性からか、信の誘いに気付かない徐林!
「愚か!無防備也っ」
信の脇腹に徐林の槍が届く!
ドッ
しかし!徐林の槍が脇腹深くえぐる前に信の振り下ろした矛が徐林の頭部をスライス!
ゾバッ
キングダム 第593話 END
【 キングダム 594話 考察 】
原先生は松左を今週も生かせました。
もはや生存確率が0に近い松左を、お涙頂戴のためだけに生かしているようにしか見えません。
劇的展開は確かに感動するかもしれませんが、毎週のようにザクザク殺されていく名もなき兵や小物将が見せる冷酷で生々しい殺伐とした世界と雰囲気を壊しかねません。
エンターテイメントである以上致し方ないとは思いますが、松左が魅力的なだけにあえて特別扱いせず逝かせて欲しかったと思います。
【 過去に生きる趙峩龍 】
大将軍とか三大天てのは常人の枠を超えたところにいる人間でしょう。
王翦や李牧もその類ですよね。
ですがそんな人間そうそういるもんじゃありません。
趙峩龍の平凡さを誰が責められましょう・・
縦には強いが横には弱い!って誰でも思いつきそうなことを秘策のように語る趙峩龍は切なすぎます。
「お前”達”は~お前”達”は~」
と、過去の将軍達の姿を信にダブらせ、いつまでも引き合いに出す老人的な思考は切なくなります。
おもひでぽろぽろ趙峩龍です。
でも仕方ありません、藺相如との過去はそれだけ輝いていたんです。
岳嬰もそんなキャラで、信によって退場となりました。
ロゾ一味も過去を引きずったキャラでした。
「過去に生きてろっ ルアアッ!」」
そんなセリフはありませんが、今回の鄴攻め辺りで覚醒と世代交代を明確にする必要がキングダムにはあるのです。
特に信以外のキャラの成長と底上げを明確にしたかったはずです。
ただのヒーロー漫画にならないために。
趙峩龍は藺相如の真似をすることで、いつしか自分も藺相如レベルの将だと勘違いしてしまったのでしょうね。
でなければあの余裕たっぷりでニヒルな感じは出せません。
【 弱いものいじめ 】
趙峩龍軍最強の少林寺・・少林徐・・違う・・えっと、あ、徐林と徐肖だ。
不必要なキャラでしたね。
物語上、趙峩龍軍の名もなき兵で十分だったはずなのです。
しかし信を強く描きすぎているため、ここのところ信が弱いものいじめをしているような戦いが続いています。
これを少しでも和らげるキャラとして投入されたのでしょうが逆効果になってますね。
最近は弱いものいじめに見える描写の多い漫画になっちゃってて心配です。
【 秦・右翼本陣への奇襲 】 】
今週、河了貂のいる本陣を狙う別動隊の存在が明らかになりました。
さも得意げに「別動隊が動いているんだよ、フフフ」みたいに趙峩龍は言ってましたけど、河了貂がその存在を想定していない訳がありません。
少人数の隊で奇襲をかけるのでしょう。
隊と名に着く以上、隊長がいるはずです。
それが尭雲である確率は高いと思われます。
その場合、対する河了貂の別動隊への対策はやはり王賁になるのでしょうか。
個人的には亜光将軍に出て来て頂きたいところですけれど。