「鬼滅の刃」は、人を主食とする異形の鬼と、鬼を狩る政府非公認の組織「鬼殺隊」との戦いを描く伝奇ロマン物語である。
数多の鬼の生みの親で、異形の鬼の集団「十二鬼月」を作りあげ、圧倒的な強さと恐怖を纏う人知を超えた闇の怪人が鬼舞辻無惨である。
一方、9人の柱が率いる「鬼の撲滅部隊」である鬼殺隊の当主で、その尋常ならざるカリスマ性で全ての人を魅了するのが、「お館様」こと光輝く産屋敷燿哉である。
産屋敷と鬼舞辻、光と闇の二人を抜きにしてはこの物語を語る事は到底できない。
物語の出発点であり、中心点であるこの2人の間には、一体どういう関連性があり、何があったのか?そしてなぜこれほどまでの憎しみや確執が生まれ今日に至ったのか―――。
今回はこの2人の関係性を深く突っ込んで考察していきたいと思う。
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[闇深き咎人のこと]
鬼舞辻無惨は今から千年以上前、一番初めに鬼になった者で、人間を鬼に変えられる血を持つ鬼だと竈炭次郎の師匠である鱗滝左近次は語る。
11話(単行本2巻)より
ってことは鬼舞辻無惨も元をたどれば人間なんでしょう!
それに関しては、鬼舞辻の呪縛から唯一逃げ続けている珠世の口からも、鬼舞辻以外は鬼を増やすことが出来ないと語られている。
15話(単行本2巻)より
鬼舞辻無惨は自分の血で12人の鬼を生み出し、「十二鬼月」を組織し鬼殺隊の殲滅と、謎のアイテム〝青い彼岸花〟の探索を命じている。
生み出された鬼には「鬼舞辻」の名を口にするだけで即死する呪いがかけられ、自分を慕う者であろうと情け容赦なく惨殺する、根っからの異常心理者なのがうかがえる。
そして、己の血を分け与えた者の思考を読み取ることができ、姿が見える距離なら全ての思考の読みとりが可能で、離れれば離れる程、読み取れなくなるが位置は把握している。
この世で鬼舞辻が読み取れないのは珠世と禰豆子だけである。
52話(単行本6巻)
普段は人間の世界に溶け込み、目立たない生活を送っているが、その姿は娘を持つ父親であったり、小さい利発な男の子であったり、女性であったりと変幻自在で、誰にもその居所を掴ませない隠遁生活を送っている。
[眩い光の源について]
鬼殺隊当主「お館様」こと産屋敷燿哉。
彼の顔は鼻から上半分が(病気か傷か?)醜く爛れ、両手はそれぞれ子供達に引かれ、ゆっくりと誘われている。
彼の涼しい目元と、口から溢れる言葉の数々がその場の空気を優しく包み込んでいく。
彼の声音、動作の律動は話す相手を心地良くさせる力を持ち、これは現代の言葉で「1/f(エフ分の1)揺らぎ」と言い、カリスマ性があり、大衆を動かす力を持つ者はこの能力を兼ね備えている場合が多い。
47話(単行本6巻)より
ちなみにこの1/f揺らぎを発することができる人間を調べてきました。
参考に歌でも聞いてみてくださいw
MISIA、美空ひばり、宇多田ヒカル、 徳永英明、Lia、松浦亜弥、大野智、Aimerなど
彼はすべての隊員を優しく見守る父親の如き存在で、隊員の心を慈愛で包み、そっと後押しする――みんなの憧れと癒しの象徴でもある。
彼の前では、自分勝手で傍若無人な柱のメンバーですらも敬服し、ただひたすらひれ伏すのみである。
「力」や「恐怖」でねじ伏せる熱血リーダータイプではなく、あくまでその人柄と燿哉独自の光輝くオーラの魅力で人を惹きつけ虜にする。
が、体は決して強くないようで病弱な感じがし、自力歩行もままならないようである。
「寂しくはないよ。私ももう長くは生きられない。近いうちにみんなのいる黄泉の国へ行くだろうから。」
66話(単行本8巻)より
これは燿哉が炎柱・煉獄杏寿郎の死を耳にした時に呟いた言葉である。
やはり燿哉は重い病を患っているようで……かなり衰弱をしているようだ。自分の死期を悟っている口ぶりに並々ならぬ覚悟が感じられる。
[光と闇の間に……]
お館様と鬼舞辻無惨。ある程度2人の事を理解すると、新しい何かが見えてきそうだ。
「上弦の陸の鬼」を炭次郎たちが倒したとき、その知らせを聞いた燿哉は、病床の中、激しくせき込み吐血しながら興奮して叫ぶ。
「そうか、倒したか。上弦を…。百年!百年もの間変わらなかった状況が今変わった。
鬼舞辻無惨、お前は必ずたちが私たちの代で倒す。我が一族、唯一の汚点であるお前は…」
97話(単行本11巻)より
特に上記の産屋敷燿哉のセリフが一番2人の関係性を物語っている。
産屋敷燿哉と鬼舞辻無惨は同じ一族だったのだ。
いや、鬼舞辻は千年以上生きているのだから、もしかすると鬼舞辻無惨は産屋敷燿哉の遠い祖先、御祖父さんではないのか。
そこで、こういう物語を想像してみた。
この「鬼滅の刃」は大正時代の設定なので千年前というとい1810~20年代。
時は江戸時代後期、古来、人知れずひっそりと存在し続けていた産屋敷一族。
「透視術」や「催眠術」など、元来、不思議な力を持っていたその一族の一人である鬼舞辻無惨はある日、何らかの方法で不死となる特殊な能力を身につけることに成功する。
無惨は一族を裏切り出奔する。彼は行く先々で人を殺め、自分の血を注入しては危険な実験を繰り返していく。
その副産物、副作用として“鬼”という異形の存在が生みだされ、その鬼達は人を食い、殺戮をはじめる。
それを知った産屋敷一族は直ぐに追っ手を放ち、総力を挙げて鬼と無惨追討に全力を挙げるが、無惨はそれを阻止すべく強力な十二鬼月を生み出し、さらに自分の力を完璧なものにすべく残酷な実験を推し進めていく。
そして無惨は見事に身を隠すことに成功し、事態はこう着状態のまま時は流れ過ぎ―――。
大正時代。先祖から「打倒!鬼舞辻無惨」の意志を受け継いだ産屋敷燿哉は新たな鬼殺隊を結成し、日々鬼狩りを続けるが、鬼舞辻無惨に近づくには至らなかった。
――――が、それは、炭次郎と禰豆子に出会う事によって、産屋敷燿哉と鬼舞辻無惨、光と闇の境界は崩れ、止まっていた運命が大きく変わり始めるのであった。
鬼舞辻無惨と産屋敷耀哉の関係まとめ
今回は産屋敷と鬼舞辻の関係性という事で、産屋敷の「我が一族」という言葉をキイ・ワードに、江戸時代まで遡り、産屋敷一族と鬼舞辻無惨の戦いの物語を考察してみました。
こういう物語があっても全然不思議ではなく、読む人それぞれの物語が目の前に展開されていくはず! さあ!これを読んでいるあなたも、想像力の翼を広げて様々な物語の大空に飛び出してみてはいかがでしょうか?
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