朱海平原の戦い・十三日目の夜
【 飛信隊・宿営地 】
尾平たちが鍋を囲んで晩飯をとっている。
各々が残していた僅かな食料(豆干)を分け合っていた。
昼間の戦闘で死んだ兵の分も鍋には入っている・・
「くそっ」
尾平が呟く。
話題はどうしても王賁の事になってしまう。
あの王賁が討たれた・・
飛信隊の兵たちでさえショックを隠せないでいた。
ドドドッ
突然、亜光軍の騎馬が数騎現れる!
「なっ 何だ」
驚く尾平たち。
「亜光軍大将代理、段茶である!飛信隊本陣はこっちで合っているか!?」
声を張り上げ、尾平に尋ねてきたのは段茶と亜花錦でした。
尾平は本陣はこの先にあると段茶に答えると
「たわけェ!自らの将の居所をやすやすと答えるな愚か者がァ!」
そう段茶に怒鳴られてしまいます。
自分で尋ねといてそりゃないよ・・な尾平。
段茶と亜花錦は飛信隊本陣に向かいます。
飛信隊副長の淵の話では
亜光軍の段茶たちだけではなく、玉鳳の将校たちも飛信隊本陣に集まっているとのこと。
「淵副長、一体何が起きてんスか・・何で急にうち(飛信隊)に」
尾平らが訝しがります。
右翼の将校らが結集している理由は飛信隊本陣を右翼の中心として明日戦うためでした。
【 宿営地・本陣天幕 】
天幕の中には信と河了貂、玉鳳副長の番陽、亜光軍の段茶と亜花錦が顔を揃えていました。
どうやら番陽が信に右翼の行く末を懸けたようです。
番陽が段茶ら亜光軍将校にも声をかけ説得し、この状況となったという訳です。
亜花錦が信に言います。
「さァ始めろ、今からこの右翼の大将はお前だ!」
そんな重大な言葉にも信に驚きや迷いは感じられません。
静かな口調で河了貂に大将になってもいいかと尋ねます。
河了貂は少しの沈黙の後、覚悟を決めた顔で信に答えます。
「やるしかない」
『よし』
即答する信。
【 中央軍・王翦軍本陣 】
王翦のもとに右翼陣営の動きを伝える報告が次々と入る。
「報告!若君の容体はご存命という以外は伝わってきておりません」
王翦は王賁危篤の報にも反応しません。
「報告!右翼が勝手な真似を始めたと・・本営を飛信隊に、大将を信に代えたものと・・」
ピク
その報に反応する王翦。
「・・・ほう」
【 鄴・城内 】
十三日目、王賁が討たれる以外に大きな出来事がもうひとつ起こる。
城内は周囲の小城から追い出された民でごった返していた。
民が噂話をしている。
「この鄴の中に、思ってた奴と全く違う何者かが、何人かわかんねェけど紛れ込んじまってるって話だ」
キングダム 588話 END
【 キングダム 589話考察 】
番陽の熱い説得で易々と右翼本陣の役目を明け渡す段茶。
己を過大評価せず客観的に状況を見れる意外と良将なのですね。
ちょっと好きになりました。
【 クライマックスと映画公開 】
いよいよ十四日目は飛信隊を真ん中に置いた戦いとなることがこれで決定。
そうです。映画公開に合わせたタイミングなのです。
朱海平原で信が活躍するクライマックス期間と映画公開を意図的に合わせたのでしょう。
すべては新規読者確保と興行収入のため。
つまり・・・
王賁も亜光も、そして趙軍も大人の事情によって登場と退場を繰り返していたのです。
もっと言えば、遼陽をめぐる山の民の間延びした展開はこのためだったのかと。
ご都合主義的な展開の理由が金銭絡みだったことが悲しくもあり、当然とも思うので複雑です。
【 王翦の策 】
どうやら王翦は鄴の中に間者を忍ばせているようです。
王翦が昌平君に頼んでいたのはこの間者たち?
目的は鄴の兵糧を減らすことでしょうが、どうやって?
李牧は自信満々に鄴の兵糧はたっぷりあるからね、先に飢えるのは秦だよんと言っていました。
あれはフリなのでしょう。
李牧のガーンな顔のアップが目に浮かびます。
間者たちは鄴の中の兵糧を燃やすのでしょうか?
そうとは思えません。
外には腹を空かした桓騎軍がいますし、朱海平原で戦っている信たちもいます。
となると・・鄴にいる民に食わせなくする。
それも民を虐殺するでもなく・・
今週なぜか突然戦場で死んだ馬の肉の話が少しありました。
趙軍は死んだ馬に謎のくさい粉をふりかけて秦側に食べさせまいとしていました。
実際一部の兵がそのふりかけが掛かった肉を食べ死んでいるといっていました。
これと似たような状況が鄴内で起こるのではないでしょうか。
少数で大きな効果となると狼が出たぞー的な扇動作戦が考えられます。
食えないらしいぞー
毒盛られたらしいぞー
投降したら食えるらしいぞー
てな具合に尾ひれが付いていく扇動作戦。
それともエンポ爺たちのように中から城門をこじ開けて桓騎軍を招き入れるのでしょうか。
いくらなんでも同じパターンを続けて使うとは思えません。
やはり馬肉話がフリのような気がします。
【 自信ありげな河了貂 】
十四日目は右翼全軍の頭脳として才を振るわなくてはなりません。
河了貂に圧し掛かる重圧は相当なもの。
しかし、どこか嬉しそうな楽しそうな表情に描かれています。
鄴攻めの前に昌平君が言っていた、各隊の臨機応変な対応が戦局を左右する場面がココでしょう。
信と河了貂の活躍、王賁の復活と羌瘣の武。
これらを映画に合わせようと一年以上前から大人たちが練っていたことに感服です。