朱海平原・鄴城の攻防
【 鄴城内・蔵付近 】
王翦が城内に潜り込ませた兵達が趙軍の兵になりすまして暗闇の中を蔵へ向かっている。
「あれがそうか」
「ああ、他の所にもそれぞれもう集まっているはずだ」
蔵は城内の四方に一つずつあり、計四つ。中には鄴城の民を養う食料が貯蔵されています。
当然、その食料を守る大勢の兵も。
「生きては戻れぬぞ」
「そんなことはどうでもいい」
王翦からこの役目を授かった時より命は無いものと覚悟していたのでしょう。
いわば決死隊といえます。
「決行だ! 王翦様に勝利を」
「ああ 王翦様に勝利を!」
【 鄴城主・趙李伯 】
「ご城主!ご城主!お起き下さい!」
就寝していた趙李伯の下に急報がもたらされる。
「大変です!城内で火の手が上がっています!」
「しかも燃えているのは・・・東の大食糧庫!」
愕然となる趙李伯。
「なっ 何だとォ!?」
続けざまに報告が入ります。
「西の大蔵が焼かれました!」
「南も・・北も燃えています!」
油汗が止まらない趙李白。
「なっ 何じゃとォ!?四つ全ての大蔵が燃えているというのかっ・・・」
王翦の潜り込ませた兵達の命を賭した働きよって、一夜にして鄴はその食料の大半を失う事になったのです。
潜り込ませた兵達は全員討ち取られてしまいましたが、その死に顔は穏やかな笑みを浮かべており、満足気ですらありました。
趙李白もパニクってばかりもいられません。
すぐさま部下に指令を出します。
1・鄴内全ての蔵の食料全部の集計
2・城内の人間の総数を再集計
3・城内の難民・兵達に食料のことは伏せる
民も兵もすぐに気づくでしょう・・
側近の部下が進言します。
「日の出と共に邯鄲の大王様と朱海平原の李牧様に鳥を飛ばします」
趙李白は鄴の食料があと何日持つのか正確な日数を出すことを命じます。
「まずは計算だ!」
【 鄴城外・包囲中の桓騎軍 】
城内から立ち昇る煙と臭いに桓騎軍の兵達が気づきます。
「見ろ煙だ」
「中で火事か?」
どうやら王翦が潜り込ませた兵達の事は知らない様子。
桓騎は城内から昇る煙を見上げている。
「チッ 遅ェんだよノロマ共が」
桓騎は事前に王翦から知らされていたのか、それともここで初めて王翦の策を察したのか・・
不気味な笑みを見せる桓騎でした。
この夜の出来事が朱海平原に伝わるには一日かかります・・・
【 朱海平原十四日目・秦右翼、飛信隊 】
この日が秦右翼にとって最激戦の日となることを開戦前から誰よりも分かっていたのは軍師の河了貂でした。
『多分今日大勢死ぬ・・死なせてしまう・・でも、それでも・・・』
今日これから始まる決戦を前に、その責任感から重圧に潰されそうな河了貂。
そこへ信と羌瘣が現れ、河了貂の気をほぐします。
「始まる前から肩に力入れすぎだぞ お前」
羌瘣も真顔で河了貂の胸をいきなりモミモミ。
「わ~ なっ何すんの羌瘣っ!」
それに乗っかり手をニギニギさせて近づく信。
ゴッ
羌瘣の裏拳が信の顔面にヒット。
「もー何なのさっ マジメにやれよ二人ともー」
河了貂は怒ります。いつものミニコントです。
信が河了貂に言います。
「そのくらいでいけよテン、いつも通りの感じでいけ」
河了貂が兵達の死を恐れていることを信は見抜いていました。
「色々と考えすぎると躊躇して判断を間違うぞ」
全員で命をかけて勝利をつかみ取るのが飛信隊です。
河了貂の策で死んだとしても、誰も河了貂を恨まないでしょう。
「ありがとう信、勝とう信」
もう河了貂の目に迷いは見えません。
信が吠えます。
「絶対勝つ!!」
【 趙軍左翼・趙峩龍軍 】
趙峩龍は秦右翼の飛信隊を中央にした陣形を見て確信します。
亜光も王賁もいないからこその陣形・・
飛信隊が中心となり、信が右翼の大将になったのだと。
見たままをそのまま受け入れるピュアな趙峩龍。
「半日で終わらせてやるぞ飛信隊、それでこの戦いは幕だ」
キングダム 589話END
【 キングダム 590話考察 】
鄴城内の食料が燃やされました・・
またまた予想は大ハズレでしたね、ゴメンなさい。
【 食料問題 】
朱海平原で戦う秦軍にはもう兵糧はありません。
桓騎軍も兵糧は残り僅かです。
橑陽には趙軍の残した兵糧や食料が一応あります。
このように秦軍は圧倒的に食料不足です。
出来る事なら・・
朱海平原で向き合う李牧率いる趙軍から兵糧を奪いたいでしょうし、
鄴内の食料も空になる前に多く欲しいでしょうし、
橑陽から各地へ兵糧を送って欲しいでしょう。
ですが、今のところどれも可能性が低いままです。
さらに今週鄴城内の食料の大半が焼けて消失。
これじゃ鄴城を落としても食料不足のままです。
やはり秦国から遼陽・鄴へと続く新たな兵站ルートが必要になりますよね。
それか・・列尾は早々に落ちなければなりません。
王翦のキレキレ先読み采配が今回の兵糧燃やしがクライマックスとは思いたくないのです。
何かもうひとつ、そこまで読んでいたのか!すげェ王翦!と唸る展開を期待しています。
【 眠ったままの獅子・趙峩龍 】
このラーメンマンは・・いや趙峩龍は未だに底がわかりません。
浅いのか深いのか?元三大天の愛弟子の肩書に見合う戦果がここまでありません。
まさかとは思いますが・・
岳嬰や犬戎三兄弟のようなことにならなきゃいいんですけれど・・怪しくなってきましたね。
亡き主との熱いシーンがあったのも岳嬰とカブるのですよ。
王賁は死んだか動けないと陣形見ただけで確信しちゃってるし、それがフェイクかもとは考えない。
亜光の所にも馬南慈と尭雲から逃げ切った亜花錦がいることも頭にない。
戦略・戦術ゼロの将として静かに笑いを取ろうとしているのでしょうか。
亡き主の面目丸つぶれにならぬことを祈ります。
【 河了貂の策 】
これには王賁の存在と亜花錦の存在が大きく関わってくると思われます。
なぜなら・・
趙峩龍がその存在をノーマークだから~☆
信を前面に押し出して後方にあえて隙を作り、そこを攻めて来た敵に対して秘密兵器ばりに王賁というコマを河了貂が使うのでしょう。
おそらく尭雲にぶつけてくるのではないでしょうか。
いずれにせよ、羌瘣の治癒のおかげで王賁復活はあるのでしょうから劇的な場面での登場でしょう。
誰かのピンチに登場でしょうか?一般兵に身を隠しての登場でしょうか?楽しみです。