料理人として成長するために海外研修に行くルイと、小説家として生きていくため邁進するナツオ。二人は、それぞれの夢に向かって別々の道を歩くことを決意します。そんな折、ナツオは取材のため、ヒナのストーカーであり、自らに重傷を負わせた種部の下に面会に来ていました。
ドメスティックな彼女197話ネタバレ
面会室でガラス越しに対面するナツオと種部。
最初に口を開いたのは種部でした。
「驚いたよ。まさか君が来るなんて。お姉さんは元気?」
「ええ。もうすっかり元の明るさを取り戻しています」
「ふーん」
種部は自分からヒナのことを尋ねたのに、ナツオの答えにあまり食いつきません。
今度はナツオから話を振ります。
「種部さんはあまりお変わりないですね。むしろ少し前より逞しくなられたような……」
「ここにいるととにかく時間が余っているからね。よく筋トレして気を紛らわしてる」
ナツオに尋ねられ、種部は嬉々とした表情で自分のことを語り始めました。
「腕立ても片手で出来るようになったよ。この間なんて三点倒立してたら刑務官に叱られた」
「入浴は週三回」
「一応浸かる湯船はあるけど、何十人と順番に入るから色々浮いてて入れたもんじゃないんだ」
「だからフロって言ってもシャワーのみ」
「最近は朝夕冷えるだろう? 筋トレは体温める程度だよ」
「まぁ、裁判が終われば執行猶予がつくだろうし、それまでの我慢だけどね」
種部の最後の言葉に、思わずナツオは「どうしてですか?」と聞き返します。
すると、種部は悪びれた様子もなく、自分語りを始めました。
「だって俺は悪くないからね」
「取り調べでも散々殺意の有無を聞かれたけど、そんなのあるわけないじゃないか」
「ヒナさんは俺が結婚を考えていた人で、君はその弟だぞ?」
「彼女があんまり聞き分けがないから、少し驚かせて話をしようとしただけだ」
「そしたら急に君が割り込んできて、刃が刺さってしまった」
「あの時君が出てこなければ、俺はこんな所に入れられることもなかったんだ」
あくまでも自分は悪くないと言い張る種部。
ナツオはそんな種部に、言葉を返します。
「俺のせいだとでも? 罪を認めないんですか?」
「罪じゃない、過失だ」
罪じゃないと言い張った種部はさらに言葉を続けます。
「本当はこんな所にいるべき人間じゃないんだよ、俺は」
「ここにいる犯罪者共とは違う」
自分は犯罪者ではないと言い切る種部。
そこでナツオは、さらなる質問をぶつけます。
「じゃああなたは、犯罪を犯す人と犯さない人は全く違う人間だと思ってるってことですか?」
「そりゃそうだろう」
種部の目に、光はありませんでした。
その晩、ナツオは先生に会いに行きました。
先生に「どうだった?」と聞かれ、自分の感じたことを言葉にし始めます。
「ああいう所に入ったら多少やつれたりするのかな、と思ってました」
「でも全然そんなことなくて。口調も落ち着いてたし、普通に見えたんです」
「でも、段々と自分を正当化するような話をし始めて、『ああ、変わってないんだな』って」
ナツオの言葉を聞いた先生はナツオの話を遮り、問いかけます。
「お前はどういう感情を持ってるんだ? 当の刺された被害者として」
その質問に、ナツオはすぐに答えることはできません。
少し悩んでから紡いだ答えは……。
「正直、俺自身に憎悪の気持ちがあるかというと微妙です」
「姉を襲ったことは絶対許せませんが」
「俺が狙われたわけではないので」
「そういう意味では、本当の被害者は姉なんだと思います」
ナツオの答えを聞いた先生は、取材について来るように指示を出しました。
向かうのは、前にナツオに話していた、事件の遺族のところです。
一軒目は、穏やかな夫妻でした。
「あの子とのいい思い出は沢山あるのに、思い出す度犯人の顔も頭にチラつくんです」
「犯人のことは許せません」
「でも憎んでも息子は帰ってきませんし、執着になるだけ」
「私たちは早く、テレビのスイッチを消すように、犯人の存在を忘れたいんです」
二軒目は、激しい感情をあらわにした、被害者の母親でした。
「憎くて憎くてしょうがありませんよ」
「なんなら早く刑務所から出てくればいいのに」
「そうすれば、あいつが娘の……清花の人生を一方的に終わらせたように、私があいつの人生を一方的に終わらせてやる!」
「あの子がどんなに怖かったか。どんなに家に帰ってきたかったか」
「どうせ法は人権を盾にあいつを守って、仇をうってはくれない」
「他人の人権を踏みにじったようなやつに、どうして人権がいるの?」
取材を終えると、先生はナツオに感想を求めました。
「なんとなく、わかる気がします」
とだけ答えたナツオに、先生が大切なことを伝えました。
「人はどうしても加害者側に興味が向く。センセーショナルで好奇心も刺激され、防衛本能も働くからだ」
「しかし、事件が1つあれば必ず、加害者と被害者が存在する」
「『犯罪』というものを軸に置いて話を考えるのならば、どちらの感情や心理にも真摯に向き合わなければならない」
「でないと薄っぺらいものにしかならんぞ」
その言葉を聞いたナツオは先生に一つ、問いかけます。
「先生は、もし自分が加害者か被害者になったらって、考えたりしますか?」
「……俺は、どちらになっても、許さんだろうな」
先生の見せた寂しそうな表情の真意は誰にもわからないまま、夜だけが過ぎていきます。
海外研修を決めたルイは、ドラマを見終えたヒナに声をかけました。
「もしよかったら、英語少し教えてくれないかな。日常会話くらいでいいから」
「迷ってたけど、やっぱり海外研修行くことにした」
「不安は色々あるけど、これからのためにも……行くべきかなって」
ルイの申し出に、ヒナはすぐ承諾しました。
ですが、ルイの表情は芳しくありません。
「向こうに行ったら、あたしが何も出来ない分、ヒナ姉がナツオに色々してあげるんだと思う」
「身の回りのこととか、細かい相談とか……」
「でも……あたしが悲しくなるようなことは絶対しないで」
「ごめん。勝手なこと言ってるってわかってるけど、どうしても……」
ルイの言葉に、ヒナはこう答えました。
「じゃあ、姉としてできることならいい?」
ドメスティックな彼女198話考察
種部はやっぱり何も変わっていませんでした。
犯罪における被害者と加害者を知ったナツオは一体、どんな物語を紡ぐのでしょうか?
そして、ついにルイとヒナのナツオを巡る戦いが、いろんな意味で幕を開けました。
ルイとヒナはどうなるか、次回必見です!