約束のネバーランド【ネタバレ】第102話「見つけたよ」
———時は西暦2047年9月 (GP蜜猟場崩壊から約1年7カ月) とある鬼の街
通りを歩く鬼達の間では、最近量産農園からの〝盗難〟が頻発していることや、失踪したバイヨン卿のこと、脱走した人間たちのことなどの様々な噂が、まことしやかに囁かれていた。
脱獄から1年と8カ月。エマとレイをはじめとした少年・少女達はこの過酷な世界をしっかりと生き抜いていた。 ただ、〝支援者〟からは何の連絡もないない状態である。
エマ達はクヴィティダラ探索から戻った後、幻影で見た「寺と金の水」を調べ直おす。
———半月後、場所を数ヶ所に絞り込んだエマとレイ達は東側から探索に赴くのであったが、そこは全て「はずれ」で、残るポイントは西側——それは鬼達の街の中であった。
エマ達は鬼に扮装し、危険を顧みずに直接「鬼の街」へと探索に赴く。
そして、とうとう「寺と金の水」の在りかを見つけ出すのであった。
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1. 街の噂
「聞いたか、また農園が襲われたって。」
「バイヨン家の量産農園だってよ。」
「〝盗難〟が最近増えたよな。」
「そういえば御当主様が失踪されてからもう1年以上だ…。」
———時は流れて西暦2047年9月、〝鬼の街〟では様々な噂が飛び交っていた。
「ひょとしたらその失踪も奴らの仕業なんじゃ…。」
「バカ! 滅多なこと言うもんじゃねぇ。」幼い鬼の兄弟が大通りを歩いていく。
仮面の下のから、せわしなく言葉が流れ出る。
「確かに一度でいいから食ってみたいなぁ。高級農園の肉。」
一軒の肉屋の軒下へと入っていき、兄が店主へ声をかける。
「お肉ください。」 「はいよ。」
「GFの人間、まだ逃げてんのかなぁ。」
「それ、もう2年近くも前のはなしだぞ。」
通りからの声に、子供たちは耳を傾ける。他の鬼の噂話だ。
「もうとっくに死んでんだろ。」
そのセリフだけがひと際辺り一面に響き渡るのであった。
急展開。物語は2年後へと一気に加速する。
それにしても〝鬼の街〟の日常の描写から始まるなんて……超以外‼
ホント、人間社会と何ら変わらない〝鬼の世界〟が、このワン・シーンだけで
一気にこちらに伝わってくるのが素晴らしい!
そしてバイヨン卿は失踪したことになっているのにも驚きを隠せない。
真実は闇へと葬られる……って、
これも「人間社会と全く一緒じゃん!」って思わず突っ込んでしまった!
そして、鬼達の噂話。農園からの〝盗難〟って…もう読者には何のことかは察しがつくはず。
では、早く続きを読み進めていこう。
2. エマ達の現在
だだっ広い荒野の地下深く。シェルターの中————
真剣な面持ちでモニター群を見つめるソーニャの姿がそこにあった。
「大丈夫、狩に出れるよ。」
脱獄から1年と8ゕ月、エマ達はしっかりと生き抜いていた。
畑を拡張し、出来るだけ外へも出ないようにして隠れている。
おかげでラートリー家にも襲われず、順調である。
ただ、〝支援者〟からの連絡は、今だ何もない……。
クヴィティダラから探索隊が戻った後、エマが見た「寺と金の水の場所」を
探し出すために、レイは関連文献を全て集めて一から調べ直していく。
————半月後、
場所をいくつかのポイントに絞り込むことに成功したレイはさらにチームを組み、
まずは東側から探索の旅へと踏み出していく。
「確かめたら、また一度戻って来るから!」
エマの元気な声が辺り一面へとコダマするのであった。
————7か月後、
エマ達は戻ってきた。東側は全て〝ハズレ〟だったのだ。
「次は西側。急がなきゃ。」エマが息巻く。髪が伸びてワイルドになっている。
そう、エマ達にはのんびりしている時間は無い。
西側には金の水の場所の候補地が7つ、寺の候補地が3つあった。
だが、その内の寺の候補地の全てが……鬼達の町の中にあるのだった!
クヴィティダラ探索後、エマ達は力強くしっかりと生き抜いていた‼
何よりもラートリー家の〝追っ手〟に見つかってなくて一安心。
先週から、そのことが心配でたまらなかったので、これで安眠できそうだ。
そして相変わらずレイの頭脳は冴えわたっている!
ほんの僅かの手掛かり(エマがチラッと見ただけ)から、しっかりと
場所を絞り込むことに成功するなんて! ホント偉い‼
東は空振り…ってことは、後は西! が…そこは〝鬼の町〟って…⁉
なんて作者は意地悪なんだ。ここでもみんなに試練を用意するなんて!
と、一抹の不安を感じながらも次へと読み進もうではないか。
3. 鬼の町で
そして舞台は冒頭の鬼の兄弟と肉屋の軒先へと戻って来る。
エマ達は今———
町の大通りを歩いていた。
ドクン ドクン ドクン。
いくら仮面を被って「鬼の扮装」をしていると言っても……
緊張で彼女たちの胸の鼓動は高まっていく———。
そのグループと、肉屋帰りの「鬼の兄弟」がすれ違う。
兄は大事そうに肉が入った大きな瓶を抱え込んでいる。
「この肉も量産肉なんだよなぁ。高級肉は上手いのかなぁ。」
兄はひとり呟く。
足元の小さな弟が、先ほどすれ違った鬼のグループの一人の足元が、
自分の足の形と違うことに気が付く。
「兄ちゃん、変な足! 変な足‼」弟が兄の袖を引く。
「ん?」急いで振り向く兄。
が———そこには、もう既に誰の姿もなかったのだった。
ダダダダダ!
細い路地裏。ダッシュで急いで物陰に身を隠す鬼のグループ。
「急ぐぞ。」
ドクン ドクン
胸の鼓動をなんとか抑えながら外へと繋がる扉から、サッと抜け出す。
ぷはッ。「危なかった……!」
森の奥で「鬼の仮面」を脱ぎ、やっと安堵の色を見せるエマたち。
「ドン! 歩き方には気を付けてってあれだけ言ったのに…‼」ギルダが叫ぶ。
「ごめん…」ドンが頭を掻きながら謝る。
「でもこのお面良かったね!帰ったらナイジェル達にお礼言わなきゃ。」エマが微笑む。
「ああ、この出来はすげえな。」レイも同意する。
緊張の中、ほんの束の間だけ生まれた穏やかな時間がゆくっりと流れていくのであった。
鬼の町への潜入‼
こんな大胆な構図を心に描いた読者は果たしていただろうか⁉
ほんの少し前までは鬼からひたすら逃げ続けるだけだったエマ達が、自ら
「鬼達の世界」へと足を踏み入れていくなんて‼ これも超予想外の展開だ。
しかもまだ子供だから詰めが甘い。しっかりと正体がバレてるではないか!
ホント危なっかしい。 ヒヤヒヤものである。
それにしても、仮面を取ったエマ達の表情にはさらにビックリ!
髪の毛も伸びて超ワイルド。精悍に引き締まっているではないか!
彼女たちの成長の早さを改めて実感するとともに、その頼もしさに感動である。
4. 見つけた
「ただいまー‼」エマが笑顔でシェルターへと戻る。
「おかえりー‼」子供たちも笑顔でワッと駆け寄る。
「みんな元気? 無事?」
「ああ、誰一人欠けることもなく元気だよ。」オリバーが代表して答える。
「それで? どうだった? あったのか?」ユウゴが尋ねる。
ニッ。 エマから笑顔がこぼれる。
「見つけたよ。あのお寺と金の水!」
そう言うエマの瞳は希望に満ちあふれているのであった。
エマの笑顔。みんなの笑顔。空間を包み込む笑顔。
この短い場面だけでもエマと子供たちの〝強い絆〟を感じ取ることができて
こちらまで微笑ましくなってしまう。
そして探していた場所も見つかり、とっても後味が良いこの感覚。
サイコーである! やっぱりラストは笑顔が良い!って、心から納得したのは私だけでは
無い筈! この調子だよ、エマ! と笑顔で返そう!
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約束のネバーランド103話考察
今週の希望ポイントは紛れもなく最後の一コマ、〝全員の輝く笑顔〟に尽きる!
新章を飾るに相応しい「力強く溢れ出す最高の笑顔」であろう。
2年に渡って丁寧に丹念に辛抱強く調べ続けた「新しい手掛かり」を、
やっとの思いで見つけ出すことができたのだからそれはもう一塩であろう!
この笑顔は掛け替えのないみんなの宝物なのだ。
読者はこれを待っていたのである。
みんなのこの笑顔を見たいがために、この物語を読み続けているといっても過言ではない。
そして、この輝きは必ず来週も続いてくれるものだと信じられる力を持っている。
いや、信じさせてくれるのだ‼
さあ! 来週もエマの〝人間国宝級の笑顔〟が見られることを楽しみに、
この1週間、もうひと頑張りすることが出来そうである。
そして我々読者もエマのように、それぞれの希望に向かって笑顔で突き進んで行こう
ではないか! では来週も笑顔でお会いしましょう!