「鬼滅の刃」に於いて、「正義」と「力」の象徴として語られるのが剣士に発現する特殊な〝痣〟である。
この物語の主人公である竈門炭次郎には前々から発現していたが、ここにきて霞柱・時任無一郎、恋柱・甘露寺蜜璃にも
〝痣〟が発現するに至り、この〝痣〟は何らかの条件を満たせば発現することが発覚する。
この〝痣〟は、代々の「始まりの呼吸の剣士」全員にも発現しており、鬼舞辻無惨をはじめとする異形の鬼達を殲滅する為の
無くてはならない重要な要素であることが当主代理・産屋敷あまねの口から明かされる。
〝痣〟の伝承は、ほんの僅かしか伝わっておらず、その殆どが謎のベールに包まれていた。
そのため、新たに〝痣〟の情報を得るには発現者3人にその時の状況を聞くしかないのであった。
しかし、炭次郎と甘露寺は抽象的で曖昧なことしか言えずに混乱を招くだけであった。
しかして〝痣〟の発現における情報は、時任無一郎1人の返答に託されるのであった。
今回は、この〝痣〟の発現方法とその効果が果たしてどんなものなのかを、無一郎の言葉に一歩先んじて、
自由な想像力を駆使して考察していこうと思う。
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[〝痣〟の発現方法:無一郎編]
まず注目したいのは、〝痣〟の発現方法を訊かれた時の時任無一郎の言葉である。
「あの時の戦闘を思い返した時、思い当たること、いつもと違うことがいくつかありました。」
「その条件を満たせば・・・恐らくみんなが〝痣〟が浮き出す筈です。」と彼は力強く静かに語り始める・・・・・・。
——————————————第128話より
この言葉から推察すると、時任無一郎の〝痣〟が発現するまでの闘いの様子を注意深く観察し直す事で、
その発現条件が見えてくるに違いない。 では時間を「無一郎v.s.玉壺」まで遡ってみよう。
無一郎は玉壺の血気術に嵌り、全身「毒針」で串刺しにされ、逆さまの状態で「水の空間」に閉じ込められてしまう。
そこで窒息寸前の状態となり、自ら死を覚悟させられる。
そこを小鉄少年の身を挺した献身で救われて罠から脱出するのであるが、まだこの時点では彼に〝痣〟は現れてはいない。
—————————————————第117話より
水責めからなんとか抜け出した無一郎だが瀕死の状態のため心が折れかけ、彼は再び死を覚悟する。
が———————「俺の事はいいから・・・他の人を助けて、刀を守って」
助け起こした重体の小鉄が虫の息で囁くのを耳にした瞬間、今まで記憶が無かった彼の脳裡を回想が過るのであった。
双子の兄・有一郎のこと、その兄にいつも冷たくされていた事、鬼の急襲を受けて兄が命を落としたこと等々・・・・・・。
その時、無一郎は死に際の兄の言葉をしっかりと思い出していた。
「どうか、弟だけは助けて下さい・・・。弟は人の役に立ちたいと願っています。」
「お前は自分ではない誰かのために無限の力を出せる・・・選ばれた人間なんだ。」
—————————その瞬間・・・無一郎の顔に鮮やかな〝痣〟が、現れたのであった‼
———————————————第118話より
さあ! それでは「発現条件」の考察に入ろう!
まず注目するのは「思い当たることがいくつかある。」という無一郎の言葉。
このことにより、〝痣〟の発現には複数の要因が重なり合わないと成立しないということが窺い知れる。
それを念頭において、この時点で分かっている「発現条件」を書いてみよう。
1.まずは炭次郎の存在が在り、彼に何らかの影響を受けたり心の触れ合いを成していること。
2.対象者が「瀕死の状態」、若しくは「危機的状況」で、〝人事不省〟に陥ってしまうこと。
3.その前後最中に、家族、想い人、心を揺さぶられる人物の回想を見ていること。
4.回想時に「自分」のためではなく、人のため、まだ見ぬ「誰か」のために力を出せる存在であると強く自覚すること。
この4つの条件が満たされて〝痣〟が発現するといってもいいだろう。
では一つずつ検証していこう。
1の場合は言うまでもなく「炭次郎」がポイントとなる。
「〝痣〟の者が1人現れると、共鳴するように周りの者たちにも〝痣〟が現れる。」という伝承が昔から存在する。
そしてこの時代、この世代に現れた最初の〝痣の者〟が竈門炭次郎その人なのである。
とすると、もし炭次郎が現れていなければ、その他の共鳴した〝痣の者〟は生まれていなかったとみていいだろう。
そして、無一郎は炭次郎との関わりの中で、様々な影響を受けている。回想では炭次郎の顔も現れる程である。
特に顕著な例としては、刀鍛冶の里で炭次郎と向かい合った時—————————
「人のためにすることは、結局巡り巡って自分のためにもなっている」と諭され、無一郎は目の色を変えるのである。
第106話(単行本12巻)より
2の場合、無一郎は「毒針+水責め」で命の危機に陥って、人事不省になった事は誰が見ても明らかであろう。
3では、双子の兄・有一郎を思い出し、瞬時に過去の痛ましい出来事全てが心に押し寄せてくる。
お館様や炭次郎も回想の中にしっかりと登場するのである。
だが〝痣〟の発現において一番重要となるのは4であろう。
無一郎は回想の中、兄・有一郎に「お前は誰かのために無限の力を出せる選ばれた人間なのだ。」と𠮟咤激励を受ける。
その瞬間、無一郎は覚醒し、彼の顔に〝痣〟が一気にが発現するのである。
〝他の人々のために、人の役に立つために力を出し切る〟という覚悟が————
〝痣〟の発現のための絶対条件なのだと改めて確認することが出来た次第である。
この発現条件、1~4が全て満たされて初めて〝痣〟が生まれるのである。
[〝痣〟の発現方法:甘露寺編]
では、この4つの発現条件が甘露寺蜜璃にも当てはまるのかを検証しよう。
まず1は、炭次郎の存在はさておき、刀鍛冶の里での炭次郎兄妹との出会いで親交を深めていたこと、
鬼との死闘の際、1度炭次郎に危機を救われたこともあり、炭次郎から何らかの影響を受けていても全然不思議ではない。
2については「肆の鬼」に即死してもおかしくない苛烈な攻撃を喰らい、人事不省に陥っている。
引き続き起こる回想3であるが、お見合いの失敗、鬼殺隊入隊後の自分らしさの解放、お館様の優しい言葉がけ、
鬼から守った人々の感謝の言葉などの様々な場面が脳裡を駆け抜ける。 そう、これも見事に当てはまる。
そして最重要項目4である。
甘露寺は人事不省で動けず、炭次郎達が彼女を抱えて必死で鬼の攻撃から逃げ、彼女を救おうと奔走する。
ようやく意識を取り戻した甘露寺は、身を挺した炭次郎達の行為に感動して泣きながら喚き散らす。
「仲間は絶対死なせない! 私がみんなを守る。」 その目は強い信念に燃えているのであった。
その後も怒涛の鬼の攻撃を全力で受けながら、
「強く、もっと強くなる。 心拍数を上げ、血の巡りを良くして、さらに強くなる‼」彼女はひたすら心の中で念じ続ける。
すると彼女の頸筋にクッキリと〝痣〟が発現するのであった。
———————————————————第124話より
かくして、恋柱・甘露寺蜜璃にもすべての条件が当てはまったので、〝痣〟が発現したのである。
因みに、炭次郎の場合は特殊で、1~4全ての条件が今までのエピソードで全部あてはまる。
彼の今までの生きざま全てが〝痣〟の発現条件であるといっても良いであろう。
彼の場合特殊なのは、額の傷が〝痣〟に変化するという形態をとるということ。
ずっと〝痣〟があるわけではなく、感情の変化によって〝痣〟が現れたり消えたりすること。
(技の瞬間や鬼の頸を斬るだけ現れたり、激怒した時などにもゾワッと出現する。)
流石に「最初の〝痣〟の者」竈門炭次郎だけあって、彼の〝痣〟だけは特別なのかもしれない。
[〝痣〟の効果]
主な効果としては「肉体的なもの」と「精神的なもの」の2つに分けられる。
「肉体的なもの」
1.〈飛躍的な身体能力の向上〉
跳ぶ、走る、投げる、斬る、殴打する、などの全ての面での身体能力が強化される。
その力の大きさは、鬼にも同様の〝痣〟があることからも、鬼と同等、いや、それ以上のモノが一定時間(短時間)だけ出せるようになったと思われる。 それは常人の2~3倍、強い能力を持つ者であれば5倍近くになるであろう。
2.〈五感の飛躍的な向上〉
人間の持つ全ての感覚が研ぎ澄まされ鋭敏になる。
炭次郎なら普段から鋭い嗅覚が3倍以上鋭敏となり、匂いだけで鬼の居所を感知できるようになるのだ。
この能力は人によってまちまちで、その人の敏感な感覚がさらに鋭利になるといっていい。
3.〈回復力、新陳代謝の飛躍的な向上〉
これは傷の治りが尋常じゃない早さとなり、毒や病気にも強い耐性ができて死から遠ざける能力が高まるのである。
流石に「不死」とまではいかなくても、それに近い状態となるのである。
今回も瀕死となりながらも全員無事に治癒したのはこの能力のおかげだといえるであろう。
「精神的なもの」
1.〈高揚感の増大〉
〝痣〟の効果として精神面で一番顕著なのは、常時〝ナチュラル・ハイ〟な状態になるという事である。
常に心地よい高揚感に包まれるため、少々の傷や痛手は感じにくくなるのである。
2.〈頭脳の使用度がアップする〉
頭のキレ、回転が早くなり全ての物事を多角的にしかも俯瞰しながら捉えることができ、いつも冷静でもある。
本来少ししか使われていないといわれている「脳」を、2~3倍に広げて使うことが出来るようになるのである。
3.〈絶望感や哀しみなどの「負の感情」とは無縁になる〉
本来人間が抱え持つ「負の感情」とは無縁になり、ひたすら一つの事に集中できるようになる。
たとえ何が起ころうとマイナスな思考は働かず、常に前向きで希望を失わないのである。
[おわりに]
ついつい長々と書いてしまったが、それだけこの「鬼滅の刃」には、いろんな事をたっぷりと考えさせてくれる要素や謎、
興味深いことが満載で、とっても素敵なマンガであるという事の証明にほかならない!
話は逸れがましたが・・・・・・
鬼舞辻無惨をはじめとする上弦の鬼「壱・弐・参」を倒すためには、
柱の全員が〝痣〟を発現させ、その力を使うことが絶対的に必要な条件である。
それ以外には鬼を倒す方法はない!?
鬼殺隊と鬼達の総力戦はもう目の前にまで迫ってきている・・・・・・。
もう猶予はそんなに残されてはいないのだ!
今回は〝痣〟について「想像の翼」を広げて色々と考察しましたが、願いは一つ。
「一刻も早く新たな〝痣の力〟を柱みんなが手に入れて、にっくき鬼達を倒してもらう!!」 これに尽きる!!
これからも、もっといもっと影ながら精一杯力の限り「炭次郎」を、「鬼殺隊」を応援していこうではありませんか!
というところで今回の考察を終わらせていただきます。
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