小説執筆のために邁進するナツオ。
種部との面会、子供を亡くした事件の遺族への取材……
多くの経験を通じて、ナツオは小説家として少しずつ成長していきます。
その一方、ニューヨーク行きを決めたルイは、日本に残るヒナに気持ちをぶつけていました。
その結果は……。
ドメスティックな彼女198話ネタバレ
「姉としてできることなら、いい?」
ヒナの言葉に少し寂しそうな顔を見せるルイ。
「それなら……うん、大丈夫だよっ」
「私だってルイにもナツオ君にも笑顔でいてほしいもん」
ヒナが満面の笑みで答えた言葉に、ルイはハッとした表情を見せました。
「ん……ごめん、こんなこと言って」
「いーのいーの、不安は吐き出した方がいいし! なんなら一緒にお風呂入って悩みごと聞こうか?」
「いいよ、別に。2人だと狭いし」
「えー、子供の時みたいで楽しーじゃーん」
「じゃ、入ろっか」
「そうこなくちゃ!」
ヒナの押しに負け、ルイはヒナとお風呂に入ることになりました。
月日は流れ、とある土曜日のこと。
ナツオはルイに頼まれ、一日ルイに付き合うことになりました。
新宿駅にやってきたナツオを出迎えたのは、可愛い格好をしたルイです。
「時間ピッタリ、服もちゃんとしてる、えらい」
「そりゃデートですから」
ルイの姿に顔を赤くするナツオ。
今回はナツオが丸一日ルイに付き合う、というデートです。
行先もルイが決めていました。
ルイがナツオを連れていったのは……「カラオケ城」というカラオケ店です。
「覚えてる?」
「覚えてるよ! ルイと初めて会った時、みんなで来たカラオケ屋じゃん!」
「正解!」
ルイとナツオが初めて出会った、いわゆる思い出の場所。
それがこのカラオケ店でした。
ルイは来週には出発してしまうからと、日本にいる間に思い出巡りをしたいようです。
「確かにあの時ルイは歌ってなかったよ」
「でも、二人で来て歌わないのはナシだろうよ!」
ナツオの言葉に「上手くないし」と口ごもるルイ。
そこにナツオが追い討ちをかけます。
「上手い下手はいいんだよ。よく言うだろ? 『歌は心』だって」
ナツオに言われ、渋々ルイが入れたのは、わりと最近の曲でした。
「前までは最近の……特に恋愛系の曲とかはなんか軽くて薄っぺらい気がしてたんだ」
「でもナツオと付き合ってから、そういう曲の歌詞も『いいな』って思うようになったんだよね」
ルイの言葉に顔を赤くするナツオ。
ナツオは、ルイが歌い終わると声をかけました。
「思い出巡りならさ、俺も連れていきたいところがあるんだ」
「よかったら、2人で抜け出さない?」
ナツオがルイを連れて向かったのは、二人の母校である赤森高校の文化祭でした。
二人が訪れたのは後輩がいる文芸部のブース。
そこでは、かつて共に活動していた後輩達が学ランとセーラーを着て部誌を売っています。
部誌のデザインはポップになり、手に取りやすくなりました。
後輩の希望でBL版の部誌を出すことになりました。
その足でお世話になった文芸部顧問の元へ向かった二人。
先生は文芸部の生徒に合わせ、学ランを肩にはおっていました。
先生はナツオの怪我が回復したことを喜ぶと、執筆の方について訊ねます。
「蔦屋さんから聞いた話だと、今回のことを活かせる内容だとか」
「この間も、俺を刺した相手のとこに面会、行ってきました。桃源先生にも取材に同行させてもらったりして、かなり気合い入れて書いてるとこです」
ナツオの進捗を聞くと、先生の注目はルイに移ります。
「橘さんは? お仕事順調ですか?」
「はい、なんとか。今度、新店舗のために海外研修にも行くことになって」
「調理の技術はもちろん、色んな見識を広げられますね」
「はい。早く一流の仕事を身につけられるように、精一杯頑張ります」
ルイの宣言に、ナツオも少し嬉しそうでした。
二人が最後に向かったのは、告白をした場所。
当時、ナツオはルイがアルの告白にOKを出したと思っていました。
月日は流れ、あの告白から1年が経とうとしています。
「なんか心配。あたしがいなくなったらナツオ、毎日泣いて過ごしそうで」
「何言ってんだよ。ルイの方が泣き虫じゃん」
「あたしは大丈夫だよ。多分向こう行ったら泣く暇ないくらい忙しいと思うし」
「言ってくれるなぁ」
「ナツオ……場所は離れててもお互い頑張ろうね」
告白をした場所で互いのことを心配する二人。
そんな時、ナツオがふと、あるものを取り出しました。
それは、ネックレスです。
三日月のペアネックレスで、2つ合わさると満月になるようです。
「前の時計みたいにさ、一緒に身につけられるものがいいなと思って」
「ネックレスにしたんだ、2つで1つになる」
「時計も指輪も料理してる時は外さなきゃだろ?」
「ネックレスなら仕事着の下にでもつけられるかなと思って」
「そしたら、いつも一緒にいられるから」
ナツオからのプレゼントを受け取ったルイは、言葉につまります。
ルイの顔がナツオの胸元にうずめられました。
「やっぱり……離れたくないよ……」
「ホントはずっと……近くに……傍に、いたい……」
泣き出すルイを、ナツオは優しく抱きしめます。
「そんなん……俺もだよ」
ぎゅっと抱きしめて、涙目でそう言葉を返すのがやっとでした。
月日は流れ、ルイは飛行機に乗ってニューヨークへ向かってしまいました。
ナツオ達は家族四人でルイを見送っていたようです。
「仕事仲間の人たちがついているとはいえ、ちゃんとやっていけるのかしら」
「ダメね。ついつい心配ばっかりしちゃう」
ルイのお母さんはとても不安そうです。
「寂しくなっちゃうね」
ヒナの言葉に、ナツオは愛おしそうに時計を眺めます。
ナツオの腕時計には、ルイとペアのネックレスが付けられていました。
「うん……でも、きっと大丈夫」
ナツオはヒナにそう告げました。
再び一緒になれるその日まで、ナツオとルイはしばしのお別れです……。
ドメスティックな彼女199話考察
ついにルイがニューヨークへ旅立ってしまいました。
仕事仲間と一緒に、ということでルイに思いを寄せる梶田も一緒ですね。
ルイが旅立つ前に見せた、最後のデートでの涙が印象的です。
ずっとずっと、泣くのを我慢してきたのでしょう。
ペアネックレスを手に、離れ離れとなったナツオとルイ。
二人の運命がどうなるのか、この先も目が離せませんね。